とにかく敵が多い文在寅
一説には親中派議員や経済重視系官僚に仕切られて「価値観外交」を捨て対中融和路線に傾いたともいわれる安倍官邸だが、習近平国賓来日を模索する一方で、日本が同盟国であるアメリカの対中包囲網に参加しないという選択肢はおそらくないのだろう。
その点、アメリカと軍事同盟を結びながら、中国とは経済で強く結びついている韓国もまた、米中対立が深まる中での難しい外交を迫られている。韓国はG11への誘いはもちろん、このEPNにも参加を促されている。米国務次官で経済を担当するキース・クラックが李泰鎬外交部第二次官に電話会談でEPNへの参加を持ち掛ければ、駐韓中国大使が大韓商工会議所に情報提供と対話の場を持ちたいと要請するなど、米中間で韓国の引っ張り合いが起きているような状況にある。
米中は互いの陣営に韓国を加えようと引っ張り合い、もし加わらなければ何らかの圧力を加えるぞと脅す。北朝鮮は南北対話の進展を望む韓国を足蹴にし、ついには南北対話の象徴とも言うべき施設を破壊する暴挙に至った。ついでに言えば韓国は日本との間も、歴史認識問題(慰安婦、徴用工)、輸出規制問題が燻っている。
文在寅の「コウモリ外交」の行く末は
こうした状況で、特に米中との関係でバランスを保つのに必死な文在寅を「コウモリ外交」「二股外交」と揶揄する向きもある。だがトランプ、習近平、金正恩という手荒なやり口も辞さない3者に囲まれた韓国が各国からどのように扱われるのかは、日本にとってもかなり重要な教材を与えてくれる。
例えば米韓関係。北朝鮮との間で「ビラを配るな、軍事行動もあるぞ」との穏やかでないやり取りがあった直後の6月13日、トランプは米陸軍士官学校の卒業式の祝辞で、次のように述べたという。
「多くの人々が聞いたことのない遠い国の長い紛争を解決することは、米軍の責務ではない」
「我々は世界の警察ではない。軍の任務である外敵から国を守るという普遍的な原則を回復しつつある」