書籍も相次いで出版されている。自伝『鐘よ鳴り響け』が集英社文庫から昨年12月に復刻され、アマゾンでベストセラー1位を独走。1万5000部を増刷する5刷目の準備に入っており、4万5000部に迫る勢いだ。「ゴールデンウイーク後に書店が営業を再開したことで、注文が増えている」(文庫編集部)という。

マガジンハウスから4月に発行されたムック本『愛の手紙 作曲家・古関裕而と妻・金子の物語』もアマゾンのベストセラーを走っている。その原典となる正裕さんの『君はるか』は、2月に集英社インターナショナルから出版された。

また「エール」の風俗考証を行った刑部芳則・日大准教授の『古関裕而 流行作曲家と激動の昭和』(中公新書)は、日本近代史を専門とする筆者による決定版ともいえる評伝で、昨年11月の発行以来、3刷1万9000部を発行している。「ドラマの人気とともに売り上げが伸びている」と担当編集者は言う。

「署名16万人分」朝ドラ誘致を目指した地元の熱気

ドラマ主題歌の「星影のエール」は、福島県郡山市で結成された音楽グループ「GReeeeN」のオリジナルで、5月25日付のビルボード・ジャパンのダウンロードチャートで初登場1位となった。GReeeeNは郡山市にある歯科大学で出会ったメンバーで構成され、福島へ貢献したいとの思いが強い。

古関のドラマに関われることが「光栄」で、「戦後、多くの方が古関さんの音楽に支えられたように、主題歌も日々起こる人生の大事な場所で支えられたらうれしい」とコメントを出している、

こうした古関のブームの背景には、彼の故郷・福島の人々による長年の支援があった。正裕さんの『君はるか』は、実は10年前には書き上げていた作品だが、なかなか出版社が決まらなかった。そのゲラを福島の人たちが読み「古関夫妻の物語を何とか朝ドラに」との運動のきっかけになった。

筆者撮影
古関裕而記念館に展示される古関愛用のハモンドオルガン

福島市は、地元の商工会議所などと「古関裕而・金子夫妻NHK朝の連続テレビ小説実現協議会」を2016年に立ち上げ、金子の故郷である愛知県豊橋市と連携。東京オリンピック・パラリンピックが予定されていた2020年前期の放送実現を目指し、約16万人分の署名を集めNHKに要望書を提出した。東日本大震災からの復興の願いもあり、誘致活動がドラマ化に結び付いた初めての例とされる。

いっぽうJR福島駅の発車メロディーは、福島青年会議所(JC)が古関の生誕100周年となる2009年をめどに企画したものだった。「歌は親しまれていても作った人は知られていない」と、2007年の福島市政100周年の際に福島JCで古関メロディーのCDを制作。収録曲を決めるために行った福島市民のアンケートの1位は「栄冠は君に輝く」で、駅メロ化をJR福島駅に働きかけ2011年に実現する。