リモート研修で「画面越しのマナーが悪いからクビ」

「すみません、急に言われて、ちょっと混乱しています……。理由がちょっとわからないんですけど……」

動揺した吉田くんは、当然ながら上司に説明を求めたという。

「君はマナーが悪い。うちはIT企業だけど、技術よりもマナーをとても重視している会社です。吉田くんが研修を受けている様子を画面越しに見ていると、はっきり言って態度が悪すぎる。君はうちの社風には合わないと判断しました」

しかし、吉田くんにはそれが思い当たる節がない。

「研修中はメモをとり、画面を見て話を聞いていたつもりです。正直、言いがかりだと思いました」

講義中のカーディガンと立膝が決定打

そもそも、画面越しで話を聞いているときに「態度が悪い」ということなど本当にあるのだろうか。

コロナもクビもなければ、今ごろ電車通勤しているはずだった(筆者撮影)

面談ではその疑問もぶつけたという。すると人事担当者は具体的に彼の態度の悪い行動について次のように指摘した。

「吉田くんは、画面越しで顎の下が見えず、ちょっとはみ出している時がある。それに、ワイシャツの上にカーディガンを羽織っていたでしょう。ある講義では、立膝で話を聞いていた。態度が悪いんです」

しかし、それは絶対に誤解だと吉田くんは言う。

「たしかに画面内に自分の顔がすべて収まらないときはあったとは思いますが、それがなぜダメなのかわかりません。人事の方に『一時的に顎が映らなくなるのはマナー違反なんですか?』と聞いたら『そうだ』と言われました。また、寒かったのでカーディガンを羽織ったのですが、それも事前に伝えていないのでダメだと言われた。それから立膝で話を聞いていたというのは完全なる誤解で、そんなことはしていません」

さらに、入社前に課せられていた課題提出が遅れていたことも指摘されたという。

「これは、卒業旅行に出るので提出が遅れると事前に伝え、了承してもらっていました」と吉田くん。

しかし、会社から下された結論は変わらなかった。