アップルとマイクロソフトの決定的な違い

クリステンセンの理論では、企業が利益最優先に走ると崖から転落してしまうことを警告しましたが、スティーブが復帰する前のアップルがまさにそれでした。クリステンセンの取材をしたジェームズ・オールワースの記事には、ほかの取材から得た結論として、スティーブとチームは最高のものを作ることに使命を抱いていて、それを喜びとしていることがアップルを際立たせる特徴だとしています。

また、マイクロソフトとアップルで幹部経験を持つ人物が、両社の違いを次のように語ったとあります。「マイクロソフトは、収益を上げられるところを見つけてそこに突っ込めるものを作る。アップルは真逆だ。彼らはまずすごい製品を作る。そしてそれを売る」。アップルでは、最高のものを作ることが何事にも優先しているのです。

熱狂的な支持者がいれば強烈な敵も生まれる

2つ目は、「共感を広げて反対者を味方につける」です。

Think differentの広告に登場する「クレージーな人たち」、すなわち、アルベルト・アインシュタイン、ボブ・ディラン、トーマス・エジソン、マハトマ・ガンディー、パブロ・ピカソといった人たちは、ディスラプターのロールモデルと言えます。彼らを突き動かすのも、「最高のもの」を作る、あるいは達成することへのオブセッションです。

イノベーションを語るときに、「2‐6‐2の法則」がしばしば引き合いに出されます。この法則によれば、優秀な人材を集めて組織を作っても、積極的で変革の推進力となるのは2割です。あとの6割はどっちつかずで、サポートする側に回るか抵抗勢力に回る人たちです。そして、最後の2割は積極的な反対者に回ります。

アップルには昔からそのテクノロジーやブランドに熱狂的な支持者がつくのが特徴でしたが、一方で強烈なヘイター(敵)も生み出していました。いかに抵抗勢力を克服するかといった変革論なるものがあるのですが、アップルのイノベーションでは、この抵抗勢力克服の鍵になるのもやはりオブセッションです。