年中OKの万能カラー“緑色”で健やかに起床
そして驚くべきことに、部屋の「色」も睡眠に影響を与える。英国で2000世帯の「寝室の装飾色と睡眠時間」を調べたユニークな大規模研究がある。その報告によると、最も睡眠時間が長い部屋の色は青、次に黄(クリームイエロー)、そして緑と続く。一方で睡眠に適さないと思われる色は紫、茶、灰色であった。最も睡眠時間の長い結果となった「青色の部屋」と、最も睡眠時間が短い「紫の部屋」でおよそ2時間も差があったのだ(図)。
色彩専門家の南涼子氏(日本ユニバーサルカラー協会代表理事)がこう話す。
「色は大脳で認識され、感情の中枢である『扁桃体』や、ホルモンの分泌を促す『視床下部』、記憶を司る『海馬』を刺激します。ですから、色は情緒を安定させたり、心身に大きく作用する。季節ごとにカーテンや布団カバーなど寝室を彩る色の見直しを。夏なら青などの寒色系で爽やかさと涼しさを、冬なら黄やオレンジなどの暖色系を利かせると体感温度にも良い影響が出ます」
一年を通して、また世代を問わず良いのは緑色という。中性色のため暑さも寒さも感じにくい。緑は自然に目のピントが合うため、見るのに余分な力を必要とせず、筋肉を弛緩させて緊張を解きほぐし、“気分の安定”につながるという報告もある。
「前出の研究でも、緑の色調で装飾された寝室で眠る人の5分の1が“前向きな気分”で目覚めています。寝室を一色に揃えるのは難しくても、布団や枕カバー、カーペットなどはできるだけ同系色のものを選びたいですね。赤と青のように、対比する色は人を落ち着かない気分にさせます」(同)
赤色は交感神経を刺激して緊張や怒り、活力に影響するという報告があり、青色は鎮静作用があって人を眠たくさせる。そのため目覚めのコーヒーを飲むときのマグカップなど、起き抜けに手に取る物の色を赤にすると良い。どんな色も“使いよう”だ。
一方で「眠りを妨げる」色の紫は、インスピレーションを刺激し、悪夢を見やすいという考察が報告されている。茶色、灰色はどちらも感情が湧きにくく、孤立した気分になりやすいよう。
「紫、茶色、灰色は“落ち着きのない睡眠”をもたらすといえます」と南氏。
寝具によく使われる「白」も、体を緊張させて覚醒させるため、睡眠に不向きという。白系を使いたいなら明るさを抑えた柔らかいアイボリーや、温かみのあるオフホワイトを。
色は視覚だけでなく皮膚でも感じられる。そのためパジャマや下着など就寝時に身につける物も「快眠につながる色」から選ぶといいだろう。