「毎日忙しく働いているときは寝不足で、仕事が休みの日にドカンと10時間くらい眠る日もあるでしょう。しかしそれを“健康的な眠り”だと勘違いし、いつも8時間寝なきゃ、昨夜は2回も目が覚めてしまったからダメという発想にはまりこむと、ベッド恐怖症になり、不眠症へつながっていく。不眠症は不眠症状を気に病んで起きる一面もあるのです。出張先で枕が変わって眠れないというのが一般的ですが、自宅の寝室ではない出張先のほうが眠れるのが不眠症です」(同)

不眠症に陥らないためには、快適な睡眠環境を整えることに気を配りたい。とりわけ「室温と湿度」が重要になる。暑いと眠れないのは誰しも理解できるが、実は寒くても睡眠に悪影響があるのだ。WHO(世界保健機関)は2018年、「住宅と健康」に関する新しいガイドラインを発表し、「室温18度以上」を“強く勧告”している。

12度を下回ると体への負の影響が出やすい

寒い季節に寝室をそれほど暖かく保つのは難しいが、特に12度を下回ると体への負の影響が出やすいことが国内外の多くの研究で報告されている。ちなみに「布団をたくさんかけて暖かくすればいい」という考えはやめたほうがいい。布団の重さで寝返りが打ちづらくなる、つまり睡眠中に「動けないこと」が体の一部に過剰な負担をかけ、これも睡眠の質を低下させる要因になる。

寝室が肌寒いときには暖房器具を使用することをお勧めするが、そこで問題になるのが空気の乾燥だ。慶應義塾大学の伊香賀俊治教授らの研究で、寝室の乾燥を感じる群は、感じない群と比べて中途覚醒をする確率が2.9倍、いびきをかく確率が1.6倍高くなっている。エアコン暖房なら加湿器を併用したい。ただし湿度過剰はカビ発生の要因になるため、加湿は最大でも湿度計で60%までに抑えよう。

また、良い睡眠と「食」にも深いつながりがある。ポイントは“幸せホルモン”といわれるセロトニンの材料となる、トリプトファンを日々の食事から摂取すること。管理栄養士の望月理恵子氏が「トリプトファンはアミノ酸の一種で、豆腐や納豆、味噌などの大豆製品、豚肉に多く含まれている」と解説する。朝にこれらの食べ物を取り、日光をしっかり浴びることで日中にセロトニンが増え、夜になるとセロトニンが眠りのホルモンである「メラトニン」に変わり、自然な睡眠状態に入りやすくなるのだ。

さらにビタミンB6、カルシウム、マグネシウムも積極的に摂取を。「セロトニンを含む神経伝達物質を放出する際に必要な栄養素」(望月氏)という。

「質の良い睡眠には、寝るときに胃が休まることも大切。満腹だと寝つきが悪くなるので、遅くとも布団に入る2時間前には食べ終えたいですね」(同)