黒人の髪はもともと細かくカールしており、白人はこれを散々バカにして笑いものにしてきた歴史がある。コーンロウはそのような中苦労して編み出されたヘアスタイルであり、黒人の彼らはプライドを持っている。

いくらブランド側がアート表現の一つであり、リスペクトを込めた文化へのオマージュですと言っても、見る人によっては「盗用のレベル」と批判されてしまうことがある。

黒人の文化を奪ってきた歴史がある

文化の盗用とは、違う文化を持つ者同士が単にお互いの文化を取り入れたり、文化交流したりすることではない。「支配的なマジョリティの文化に属する者」が「不利な立場にいるマイノリティの文化」を、もともとの趣旨や意図、意志に反する形で勝手に使うことであり、そのルーツは植民地主義や帝国主義にある。

アメリカの場合は、ネーティブアメリカンの虐殺、黒人奴隷制度が元になり、白人が黒人の文化を、または白人がネーティブアメリカンの文化を勝手に使う、ということになる。この行為は盗用された者にとって、大きな痛みを伴う歴史があるのだ。

白人による黒人文化の盗用で最も代表的なのはロックンロールだ。黒人音楽であるリズム&ブルースから生まれたロックンロールを、白人に演奏させることで「白人の音楽」として流行はやらせた。当初、黒人には何のクレジットも与えられなかったという経緯がある。

ヒップホップ・カルチャーもそうだ。ヒップホップは黒人が作り出したものだということに異論がある人はさすがにいないと思うが、ロックンロールの前例があるために、白人のヒップホップアーティストが出てくると、最初は黒人を中心に拒否反応が起こった。

しかし、それがアートとして素晴らしく、リスペクトが感じられれば、黒人にも温かく受け入れられている。真似されるのは自分たちの文化がかっこいいからだと、誇りに思う人もたくさんいる。

“盗用”と“尊重”、その違いとは

ちなみにコム・デ・ギャルソンのウィッグ問題を最初に炎上させたのは、「ダイエットプラダ」というインスタグラム・アカウントだ。デザインの類似性やブランドの不適切な表現を取り上げ、ファッション界の監視役とされている。若い白人とアジア人の2人で活動し、ドルチェ&ガッバーナの人種差別問題を最初に告発したことでも知られている。こうしたソーシャルメディアの存在も見逃せない。

実際、ミレニアル世代とZ世代はこうした差別や偏見に非常に敏感な世代だ。アメリカだけ見ても若い世代の4割以上がマイノリティであり、多民族や他宗教のバラバラの常識や価値観を持った同士がこれからの平和な未来を一緒に作っていかなければならない。世界中がネットでつながっている今、これは世界の縮図と言っていいだろう。