“クール”だった日本語に起きた変化
そして中には、メインロゴである「Superdry極度乾燥(しなさい)」という言葉そのものを問題として挙げる人もいる。
かつて、日本人が英語やフランス語の意味が分からないながらもエキゾチックな魅力を感じたように、「極度乾燥(しなさい)」も意味不明だからこそ、外国人にとってはクールなロゴだった。
ところが今では、そのフレーズに一体どういう意味があるのか、その意味とブランドが打ち出すメッセージにどういう関係があるのかが問われるようになっている。意味が分からなければ、筋も通らないという方向に時代がシフトしているのだ。
背景としては世界がグローバル化し、ネット上で英語・日本語に限らずさまざまな言語が氾濫するようになり、コミュニティにも多様な人種や国籍の人が身近に存在するようになった。一方で、アニメ、日本食ブームや、来日観光客の増加で、日本語に親しむ人が増えたことも大きい。つまり異言語、異文化をもっときちんと知り、リスペクトすべきという考えを持つ人が増えてきたということだ。
意味不明なロゴが足かせになっている
同時に、デジタルネーティブで多くの情報に瞬時にアクセスするミレニアル&Z世代は、企業やブランドにもトランスペアレンシー(透明性)を求めるようになっている。食品の成分や洋服の素材がサスティナブルかはもちろん、そこに書かれていることの意味もはっきりと知りたい。さらに、それがブランドとして打ち出したいメッセージなのかという点にも強い関心を持っている。
例えばユニクロは、「UNIQUE CLOTHING WAREHOUSE(他にはない衣類が集まる場所)」を略したものである。シンプルで手頃な値段の服がなかなか見つからないアメリカで、むしろミニマルなデザインがユニークと認知されているのも、ブランドとして成功した一つの要因だろう。
Superdryの場合、デビュー時は意味不明だからこそインパクトのあったロゴが、時代が変わった今では逆に足かせになってしまったと言っていいかもしれない。ブランド再生のためには、日本語のフレーズをやめたほうがいいという声さえある。
下着に「KIMONO」と名付けたキム・カーダシアン
もう一つのポイントは、ダイバーシティの時代に大きな問題となっている「Cultural Appropriation=文化の盗用」だ。
2019年、キム・カーダシアンがKIMONOという名前で下着ブランドを立ち上げようとした時、日本からだけでなく、アメリカ人からも「文化盗用だ」と叩かれネーミングを変更した。
日本人から見れば、日本が誇る伝統文化の着物=キモノを下着のブランド名にするなんてとんでもないと感じただろうが、こういうことは日常的にあちらこちらで起きている。最近でも、日本のデザイナー・川久保玲が手掛ける「コム・デ・ギャルソン」のファッションショーで、黒人特有のヘアスタイルであるコーンロウを白人モデルがウィッグとしてかぶり、物議を醸した。