平成時代にアパレル業界の主役は交代した。レナウン、三陽商会、東京スタイルなどは売上ランキングから姿を消し、ユニクロ、しまむら、青山商事という「カテゴリーキラー」に取って代わられた。激動の裏でなにが起きていたのか。『アパレル興亡』(岩波書店刊)を上梓した作家の黒木亮氏が解説する――。(後編/全2回)
柳井正 ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長
写真=AFP/時事通信フォト

ランキングから姿を消した大手アパレル・メーカー

村上ファンドに勝った東京スタイルの創業者、住本保吉氏は終戦直後「人が人である限り、敗れようと勝とうと、衣服の必要性に変わりはない」と語った。その言葉の通り、アパレルは不滅の産業である。

しかし、平成不況とインターネット・携帯電話の普及は、業界に劇的な変化をもたらした。かつて王者の名をほしいままにしたレナウン、バーバリーで一世を風靡した三陽商会、村上ファンドに勝った東京スタイルなどが売上ランキングから姿を消し、ユニクロ、しまむら、青山商事という「カテゴリーキラー」に取って代わられた。それは愕然とするほど完璧な主役交代だった。

※編集部註:初出時、「バーバリーやアーノルドパーマーで一世を風靡した三陽商会」としていましたが、アーノルドパーマーはレナウンのブランドでした。訂正します。(2月25日15時15分追記)

▼アパレル業界の売上高トップ5社(直近通期決算)
①ファーストリテイリング(ユニクロ) 2兆2905億円
②しまむら 5460億円
③青山商事 2503億円
④ワールド 2499億円
⑤オンワードホールディングス 2407億円

ユニクロの勝因と既存大手アパレル・メーカーの敗因は何だったのか? そして一般消費者の目に触れることのないもう一人の勝者の正体を『アパレル興亡』(岩波書店)では描いた。