おでんの具材と、ベースとなるつゆに関して、コンビニ大手チェーンが全国に店舗網を築く過程において、当然「地域性」に着目するようになる。明確に分かれる関東と関西の違いだけでなく、東海、北海道、九州はどうなのか。さらに細かく見ていけば具材にも地域性があるはずだ。
中国ではおでんが“串刺し”の状態に
2000年代に入ると、各チェーンが具材とつゆの「地域性を競う」ようになった。外食チェーン大手が全国一律のメニューと味で店数を増やす時代ではあったが、外食が「ハレ」の需要であるのに対して、コンビニは「ケ」の需要であり、家庭の料理を代行する役割がある。全国各地に、コンビニ向けの専用工場や協力工場が組織化されるにつれて、おでんの具材もつゆも、その土地の工場が、地域特性を反映させて製造することが可能になった。
例えば、北海道では「フキ」、東北では「玉こんにゃく」、関西は「ごぼう天」、九州は「豚ナンコツ」といった具材。つゆについては、北海道は煮干しが強め、東海はむろ節を加え、関西は昆布を変えてさっぱりとした味にし、九州はあごだしを用いるなど、特徴を持たせていった。
話はやや飛ぶが、日本のコンビニとして中国本土に初めて出店したローソンは、上陸から一年後の97年に、上海の店舗で日本と同様の専用什器を用いて、おでんの販売をスタートさせた。当初は日本と変わらないメニューで臨んだが反応が鈍く、ローカライズの必要に迫られた。
そこで、現地のマーケットを調査した結果、購入後すぐに食べられる状態が必須とわかり、全品串に刺したおでんに切り替え、具材は魚や肉の練り物を中心とした。このことで、おでんの「ワンハンド」化がなされ、消費者の支持を得ていった。その後、ローソンに限らず、他のコンビニも追随することで、中国では串おでんを定着させている。