セブンの「唐揚げ弁当」は地域によって下味が変わる

食材のサイズや価格も、地域開発商品に影響を与える。例えば、鮭の切り身を使用した弁当をチェーン本部が企画したとする。もともと北海道は鮭の消費量が多く、価格も安い。関東で販売する鮭と同じ大きさでは、北海道の客を満足させることができない。そこで弁当の具材と価格は同じでも、北海道版は鮭の切り身を大きめにするといった発想が用いられる。

ただ、提供する側がどれだけ地域性に注力しても、地域に住む消費者はその地域性に気がつかず、何事もなかったように食べて終わるであろう。コンビニが大切にする地域性とは、地域の人たちにとってごく日常的な当たり前の食生活を対象としている。こうした細部への熱意が2000年代に入ると、よりいっそう強くなる。

その代表格が、米飯弁当でいえば「鶏唐揚げ弁当」になる。どのコンビニでも常時品揃えしているベーシックアイテムである。セブン‐イレブンは2000年代の中盤、使用する鶏を中国産の冷凍から国産のチルド肉に切り替えている。その国産の生肉を全国の工場でカットする過程において、各々の地域で好まれている調味料を手もみにして、下ごしらえすることにより、地域特有の商品とした。

その独自の味付けを試みたのが、全国10地区の工場。例えば、北海道では、ほどよく生姜を利かせた「北海道味」に仕上げた。栃木・茨城では、茨城県の柴沼醤油を使用、長野・山梨では、信州味噌を隠し味にして、付け合わせに地区で馴染みのある野沢菜のピリ辛炒めを添えた。中国地区では、地元で好まれている「牡蠣だし醤油」で下味をつけている。

全国どこにでもある「鶏唐揚げ弁当」であるが、基本となる下味には、しっかりと地域性を盛り込んでいる。

地域メニューの割合は全商品の7~8割にも

また、セブン‐イレブンは、見た目からして「地域性」と「季節性」を前面に出したシリーズ「地域のご飯メニュー」も投入している。これは一食分のご飯の上に軽めの具材を乗せた商品であり、価格は全品295円(当時)に統一した。07年6月、7月には全国9つの地区で異なる商品を推奨した。鶏唐揚げ弁当と違って、地域の特徴を食材で表現している。いくつか紹介すると、

◎北海道:時しらず御飯
◎東北:さんま御飯
◎群馬・新潟:津南産アスパラ添え海老ピラフ
◎栃木・茨城:茨城県産しらす明太子御飯
◎長野・山梨:野沢菜鶏そぼろ御飯
◎東海:駿河湾産しらす御飯
◎関西:ちりめん山椒御飯
◎中国:焼さわら御飯
◎九州:明太子御飯
(『月刊コンビニ』2007年8月号より)