ヒット商品を生み出すコツとはなにか。セブン&アイ・ホールディングス名誉顧問の鈴木敏文さんは「すでに顕在化したニーズを満たすのではなく、潜在的なニーズを発掘することが重要だ。つまりデータの奥にある買い手の心理を読み解く必要がある」という――。

※本稿は、鈴木敏文『鈴木敏文のCX入門』(プレジデント社)の一部を再編集したものです。

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撮影=プレジデントオンライン編集部

最初の「満足」はやがて「飽きる」に変わる

IoT(モノのインターネット)などで集積したビッグデータをAIなどで解析し、特定のパターンを見出して解を導く。このビッグデータ解析は、企業の種々の業務・活動の合理化、コストダウン、リスク低減などについては有効でしょう。

しかし、消費者の購買動向や購買行動についていえば、疑問を感じざるをえません。

注意すべきは、これまでに集積されたビッグデータは、あくまでも過去のデータであるということです。それをAIで解析し、消費のパターンを導き出しても、すでに顕在化しているニーズに追随することはできても、これまでにない潜在的ニーズを発掘することはできません。

お客様が求める満足度のレベルは常に増幅します。顕在化しているニーズに対応した商品やサービスを提供しても、最初の「満足」が、次は「ただの合格点」になり、やがて「飽きる」に変わります。

お客様は常に新しい価値を求め、より大きな満足を求める。それに応えるには、仮説を立てて、潜在的ニーズを掘り起こすことです。

そのとき、販売データの個々の商品の売れ行きの動きから、問題意識をもって、新しい兆しはないかと探ってみると、新しい売れ筋や潜在的ニーズを察知して、先行情報として活かし、仮説を立てることもできます。

ポイントは、データの向こうにお客様の心理を読み、意味を見出せるかどうかです。