オフィス街の店舗では、サラダが売れていた

2つ目は、セブン‐イレブンの店舗での例です。

都心のオフィス街にあるセブン‐イレブンの店舗では、昼のピーク時にサラダが大量に売れていました。主に女性客が弁当類と一緒に買っていました。

セブン‐イレブンでは、オペレーション・フィールド・カウンセラー(OFC=店舗経営相談員)といって、一人で7~8店舗を担当して、経営のアドバイスを行う社員がいます。

あるとき、POSデータを見ていた担当OFCが不思議な数字を見つけました。朝の出勤時のピーク時にも、数こそ昼とは比べものにならないほど、ケタ違いに少ないものの、サラダが売れているのを見つけました。

店舗スタッフに聞くと、出勤途中の若い女性客が買っているといいます。

ダイエット志向の女性は朝食にもサラダを買うのではないか。ここに「サラダを朝食として食べる」という潜在的なニーズがあるのではないか。OFCはオーナーと相談し、朝のピーク時に向けて、サラダの大量発注を仕かけました。

出勤途中に買って、昼の混雑を避けたい需要

仮説は見事に的中しました。女性客が朝食がわりにサラダを買ってオフィスで食べるというニーズに加え、朝、出勤途中で買って会社の冷蔵庫に入れておいて、昼の混雑を避けることを目的とした需要もありました。

以降、その店では朝もサラダが大量に並ぶようになって、売り上げを3~4倍に増やし、潜在的ニーズを掘り起こしていったのです。

サラダ
写真=iStock.com/MARCELOKRELLING
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そのOFCはそれまでは、売り手側の発想で、「サラダは主に女性客が昼食と一緒に買うもの」と思い込んでいました。その思い込みのままであったら、POSデータを見ても昼のピーク時のサラダの販売個数に関心が向いたままで、朝のサラダの販売データを見ても、さほど気に留めなかったでしょう。

気づきをもたらしたのは、やはり問題意識でした。そのOFCは「健康志向が強いお客様には取り組み方次第でもっとサラダを買ってもらえるのではないか」という問題意識をもっていました。

もっと買ってもらうためには、「お客様の立場で」考え、お客様の心理を読まなくてはならない。そこで、売り手から買い手へ、視点を切り替えてPOSデータを見るようになって、初めて朝のピーク時の販売データが意味をもって浮かび上がったのです。