欧州まで最速最短、地の利を生かした戦術

「メルカトル図法」による世界地図に見慣れていると、北欧は日本からかなり遠い印象を受ける。だが、実際はそうではない。「正距方位図法」の世界地図と比べれば一目瞭然だ。

正距方位図法(「どこでも方位図法」より CC BY-SA4.0)

フィンエアーはシベリア上空をまっすぐ飛行する「最短ルート」で欧州を目指す。このルートでは欧州の中で日本に最も近いのが北欧になる。つまり北欧が「欧州の玄関」にあたるため、東アジアを往来する路線は特に「欧州最速便」となり得るのだ。

フィンエアーの日本路線は、今春から最大6空港週38便となる。特に福岡と新千歳では、欧州直行は同社だけであり、日本国内で成田、関西、中部や近隣アジア諸国を経由するよりも早く欧州各地へ到着する。新千歳発で往路9時間半、復路9時間でヘルシンキ・ヴァンター空港に着く。欧州の大手航空会社に比べて約2時間、飛行時間が短縮されている。

また、同じアジアで「最速」を享受できる中国本土へも6都市に乗り入れている。2015年に欧州のエアラインで初めて最新鋭機エアバスA350の運航を始め、現在、発注したエアバスA350-900型19機のうち14機が運航している。他に長距離用機材ではA330-300を8機保有する。日本路線では成田、関西、中部、中国では北京首都や上海浦東空港などの路線などに投入し、日本や中国を含むアジア重視の姿勢が鮮明になっている。

勝因は「乗り継ぎ需要」の掘り起こし

日本路線のライバルは、欧州最大のエアライン「ルフトハンザ・ドイツ航空」だ。世界ランク5位。グループの「有償旅客キロ」(RPK)で、2844億RPKで、会社の規模はフィンエアーの8.2倍となる。そのルフトハンザでさえ、日本路線は羽田、中部、大阪の3空港26便。しかもその数字はドイツのフランクフルトとミュンヘンの2都市への乗り入れの合計便数だ。フィンエアーの23便とさほど変わらない。

ちなみに、日系エアラインとの関係は次の通りとなる。同じ「ワンワールド」アライアンスの中でJALと共同運航を行っており、成田線においてはJALも自社でヘルシンキ行きを運航している。もちろんのこと、JALのヘルシンキ便でも最速便は変わらない。

フィンエアーは日本国内就航地でJAL便へ、JALはヘルシンキ以遠でフィンエアー便に乗り継げる。JALとは競合というより協力会社だ。対するANAは「スターアライアンス」のルフトハンザ航空などと共同運航で乗り継ぎ需要を掘り起こす。ANAとはライバル関係である。