なぜインフルワクチンを打ってもインフルにかかるのか

こうしたインフルエンザワクチンの短所を紹介すると、「予想が当たらないなら、流行しているインフルエンザウイルスを使って、直接ワクチンを作ればよい。問題はすこぶる簡単だ」と言われるかもしれません。確かにご意見はごもっともで、良策のように思えます。

しかし、ワクチンは製造に着手して流通に至るまでは、少なくとも数カ月はかかるのです。ワクチンは1週間ででき上がるような結構な代物ではありません。現在のインフルエンザワクチンは膨大な数の孵化鶏卵を使って製造していますので、ワクチン原料になるウイルスを大量に集めるのには時間がかかるのです。質の良い孵化鶏卵を揃えるのだけでも大変な作業です。

製造だけでなく、ワクチンの有効性や安全性を確認するための時間も必要なのです。季節性インフルエンザワクチンに限れば、次年のインフルエンザシーズン用のワクチン株は、その年のシーズンが終わる頃の2~4月に決定されることが多いのです。要するに、次のシーズンが始まる数カ月以上前ということになります。

こうして決められた株を基に、次のインフルエンザシーズンに備えて、ワクチンが夏場にせっせと製造されているのですが、その空白の数カ月の間にヒトのウイルスが変異を起こして抗原性が変わったり、動物から予想外のインフルエンザウイルスがヒト社会に侵入して流行することがあるのです。このため、ワクチン株が流行株と一致しないことが起こるのです。

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季節性インフルエンザワクチンの副作用とは

季節性インフルエンザワクチンの副作用については、接種部位に軽い炎症を起こすぐらいで、発熱や頭痛といった全身反応はまれです。起こっても2~3日で消滅します。その他、ギラン・バレー症候群、急性脳症、痙攣などの深刻な副作用報告例もありますが、ワクチン接種との因果関係については明らかになっていません。

高齢者には毎年1回のインフルエンザワクチン接種(皮下接種)が勧められています。インフルエンザシーズンは師走から3月にかけてですから、10月から12月の初め頃までに接種するのが効果的です。