インフルエンザと風邪の違いを説明できますか

わが国では風邪とインフルエンザが混同されることが多いのですが、お互いに違うものです。インフルエンザを起こす病原体はインフルエンザウイルスですが、風邪の病原体はコロナウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、RSウイルスなど、200種類以上のものが存在します。多くはありませんが、細菌の中にもヒトに感染すると風邪様の症状を呈するものがあります。

尾内一信、高橋元秀、田中慶司、三瀬勝利(著、編集)『ワクチンと予防接種のすべて 第3版』(金原出版)

なお、インフルエンザウイルスにはA、B、Cの3型があります。C型は臨床上さほど重要ではなく、問題なのはA型とB型です。病気の症状も、インフルエンザは風邪とは比較にならないほど強烈です。インフルエンザに罹ると38℃以上の高熱を発し、極度に倦怠感を感じます。筋肉痛や関節痛も伴います。高齢者には重症化して、死をもたらすことも多い病気です。

かつては経験を積んだ医師は別として、新米の医師がインフルエンザと風邪を区別して診断するのは難しい側面がありました。

現在は市販の迅速診断キットを使えば、10分から20分のうちでインフルエンザウイルスが検出できます。また、A型とB型ウイルスを区別して診断することが可能です。キット法によるウイルスの検出感度は、材料の採取方法や採取時期によっても異なります。鼻腔吸引液、鼻腔ぬぐい液、咽頭ぬぐい液などが検査のために採取されます。結果が明瞭でない場合もありますが、陽性の場合はインフルエンザと診断されます。

しかし、患者材料の採取時期や採取方法によっては、インフルエンザの確定診断ができない場合もあります。

インフルエンザワクチンには2種類がある

2019年2月現在、わが国で承認されているインフルエンザワクチンは2種類のものに分かれます。

このうちの1種類は、冬期に流行を繰り返している「季節性(通年型)インフルエンザ」に対するワクチンです。そして、もう1種類は2007年に初めて承認された新型インフルエンザ(高病原性インフルエンザ;H5N1型)ワクチンで、将来発生するかもしれないH5N1型高病原性インフルエンザの流行に備えるためのワクチンです。

同じインフルエンザワクチンの名前がつけられていますが、両者の使用目的などは大きく違っていますので個別に紹介します(新型インフルエンザ(高病原性インフルエンザ;H5N1型)ワクチンに関しては後編で紹介)。