タミフル、リレンザ……6種のインフルエンザ治療薬を全解説

かつて、インフルエンザや風邪に罹ると「卵酒を飲んで寝る」というのが有力な治療法でした。この言葉を翻訳すると、「インフルエンザを治すには、休養と栄養をとるに限る」ということになります。

現在は多くの方がご存じの通り、インフルエンザには抗ウイルス薬が開発されています。2019年4月現在、以下の6種類が利用できます。

アマンタジン(商品名、シンメトレル)
オセルタミビル(タミフル)
ザナミビル(リレンザ)
ペラミビル(ラピアクタ)
ラニナミビル(イナビル)
バロキサビル(ゾフルーザ)

このうち、イナビルとゾフルーザは、わが国で開発された薬で、それぞれ2010年と2018年に承認されています。上記の薬のうちで、シンメトレルがウイルスのヒト細胞への侵入を抑制するに対し、後発のゾフルーザは「キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬」と呼ばれる経口薬です。

宿主細胞の中に侵入してきたインフルエンザウイルスの転写を抑える新しいタイプの薬で、服用1回で、効果が出るとされています。A、B両型のインフルエンザに効果があります。ただし、耐性ウイルスが出やすいという問題点があり、要注意です。

写真=iStock.com/Beka_C
※写真はイメージです

全身症状を示しているインフルエンザ患者にはあまり効果ない薬

タミフルなど残りの4薬は、NA(ノイラミニダーゼ)蛋白質を阻害し、細胞内部で作られたウイルスが細胞の外に出るのを抑える作用があります。すなわち、タミフルなどはウイルスのヒト細胞への感染を阻止するものではなく、感染した後で、でき上がったウイルス粒子が細胞から放出されるのを阻止します。これによって、ウイルスが増殖を繰り返すのを抑えるとされています。これらの薬は作用機構からも想像できるように、すでに全身症状を示しているインフルエンザ患者にはあまり効果が期待できません。

シンメトレルは耐性ウイルスが出やすい薬で、投薬された3割以上に耐性ウイルスが出現したというデータがあります。使用例が増えるとともに、薬の切れ味が落ちています。B型ウイルスには元々効果がありません。キットを使った検査などで患者のインフルエンザウイルスがB型であることが分かった場合は、シンメトレルの投与は行うべきではありません。現状では、本薬は推奨できる薬ではなくなっています。

タミフル、リレンザ、ラピアクタ、イナビル、およびゾフルーザはA型にもB型にもある程度、効果があります。耐性ウイルスの出現も報告されていますが、出現頻度はシンメトレルほどではありません。