季節性インフルエンザワクチンは「65歳以上」に効果あり

これまでワクチン接種に関して、賛否両論が出されてきた季節性インフルエンザワクチンの効果については、効果は健康な若者たちに対しては明らかでないとするのが正しいかも知れません。

しかし、65歳以上の高齢者や持病を抱えている易感染者の人たちには、インフルエンザワクチンを接種することにより、ウイルス感染後に起こる細菌感染による肺炎に対して、予防効果があることは明白です。当然、インフルエンザワクチンの細菌性肺炎に対する予防効果は間接的なものなのです。

「風邪やインフルエンザは万病のもと」とも言われています。特に高齢者や易感染者には、インフルエンザに罹った後に起こる細菌感染で肺炎を起こすことが憂慮されています。

インフルエンザ患者は感染症に対する抵抗力が低下しているために、細菌感染を起こしやすいのです。数ある肺炎を起こす細菌の中でも、肺炎球菌は病原性が強く、肺炎の死亡者の約半数を占めています。

インフルエンザワクチンによる予防接種でインフルエンザ患者が少なくなれば、それに比例して肺炎などの患者数も減ることになります。65歳以上の高齢者、または60歳以上から65歳未満の易感染者たち(呼吸器、循環器、泌尿器などに病気を持っている人、負傷者、HIV感染者など)には、インフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの両方を接種すると、肺炎の予防効果が一段と高くなるという統計結果も出ています。こうしたこともあって、高齢者たちには、インフルエンザワクチンが定期接種の対象になっています。

写真=iStock.com/Shoko Shimabukuro
※写真はイメージです

頻繁に突然変異を繰り返すインフルエンザウイルス

インフルエンザワクチンの最大の欠点は、流行するインフルエンザウイルスの抗原性や型が年ごとに変化することもあって、効力が長続きしないという点にあります。インフルエンザウイルスは突然変異を起こしやすいウイルスなのです。このため、1年ごとに流行するタイプを予測してワクチンが作られています。

具体的に書くと、WHO(世界保健機構)が次のシーズンに北半球で流行しそうなウイルス株を予測し、結果を各国に知らせます。その情報をもとに、わが国におけるインフルエンザの流行状況の調査や、分離ウイルス株の抗原分析、国民の抗体保有状況などの膨大な資料が検討され、国立感染症研究所や厚生労働省の担当者たちが意見を交換し、次シーズンのワクチン用ウイルス株が決定されます。WHOの推奨株がそのまま採用されることもあれば、一部が別の株に置き換わることもあります。

以前は流行株の予想が当たらず、「競馬の予想屋以下の的中率だ」と酷評され、ワクチンへの不信感を助長していました。しかし、近年はかなり予想が当たるようになりました。予想が的中するようになったのは、ウイルス学が進歩したことに加えて、世界レベルでインフルエンザの流行疫学調査が行われ、その情報が生かされるようになったためです。

とりわけ、ウイルスの遺伝生化学的解析技術が格段に向上したことが、流行株の予測的中率を高める要因になっています。そうは言っても、神様ならぬ人間様のやることですから、予測が外れる年もかなりあります。