目立つマナー違反、生活の場への浸食するツーリズム

文化にかんする摩擦は「マナー違反」という形で問題化されることが多い。

「試食をすべて食べてしまう」「他の店の食べ物を持ち込む」「何も頼まずに居座る」など飲食店でのふるまい、ゴミのポイ捨て、トイレの使い方、道端で座り込む、落書きなど、この種のトラブルは観光地ごと、街ごと、お店の形態ごとに枚挙に暇がないほど多種多様な形をとることになる。

もちろん「旅の恥は掻き捨て」的な非日常ゆえの大胆さに起因するマナー違反もあるが、主にこのような異文化接触時の摩擦がマナー違反問題の根底にあると思ってよいだろう。

定番の観光名所だけでなく地元の人々の暮らしを観光対象とする「まちなか」観光の人気が生む問題もある。市民の生活のための場所だった錦市場が観光化されていく問題や、舞妓パパラッチという形で問題化されている祇園や花街における外国人観光客のマナー違反の問題も、そもそもは「一見さんお断り」で知られる「敷居の高さ」で日本人観光客が遠慮を感じていた祇園界隈に、そんな感覚を共有しない外国人観光客が押し寄せていることが問題の根本である。これもある種の異文化接触の問題といえるだろう。

いずれにせよ、京都でオーバーツーリズムが問題化しはじめた2014年から2016年の間に外国人宿泊客数は3倍も増加していた。このことからも観光客の「質」の変化が京都の地域社会にどれほど大きな影響を与えたかをうかがい知ることができるだろう。

圧倒的な存在感を示す中国人のポテンシャル

では現在、外国人旅行者として日本を訪れているのはどのような人々なのだろうか。現在、訪日外国人の5人に4人はアジア人であり、欧米人は10人に1人ほどである。

2018年のデータでは中国(26.9%)、韓国(24.2%)からの旅行者だけで全体の5割を超え、これに台湾(15.3%)、香港(7.1%)を加えると東アジアからの観光客だけで73.5%も占めることとなる。

とくに年々数を増し続ける中国人の存在感は大きく(2008年の訪日中国人は100万人ほどだったが、2018年には約838万人)、「3人に1人は中国人」といってもよいくらいである。彼らこそ日本の外国人観光客急増の原動力といってもよい。