ショッピングモールと専門量販店という脅威

背後には地方百貨店をとりまく3つの競争環境がある。第1は立地間競争、つまり郊外立地の脅威である。

商業は自家用車の普及とともに郊外化が進んだ。特に地方では一家に2台いきわたるようになったころ、90年代後半からバイパス沿いにショッピングモールや専門量販店が増えた。郊外に新たに生まれた商業拠点との競争が激化し、街道沿いや駅前の商業地が衰退した。

大沼米沢店のあった米沢市は、2006年に市内で最も地価(相続税路線価)が高い地点が郊外の県道米沢環状線沿いに移った。高岡大和のあった高岡市は北陸新幹線の新高岡駅が郊外に開業したこともあって、国鉄時代からあった高岡駅の人通りが少なくなった。

第2は業態間競争である。数万平方メートル級のショッピングモールが珍しくない今と違って、かつて大型店といえば百貨店しかなかった。街道沿いや駅前にあった7~8階建ての百貨店と、それをとりまく商店街で地域の買い回り需要をまかなっていた。また、百貨店は婦人服を主力としながらハンドバッグや化粧品、食料品から家具まで、その名の通り「百貨」の品ぞろえだった。同じような業態は他になかった。

現在は数万平方メートル級のショッピングモールがその役割を担っている。分類上は同じスーパーマーケットであっても、食品スーパーと大型ショッピングモールは見た目も中身も相当異なる。もっとも、スーパーマーケットを本業とする会社が地方都市の駅前で百貨店業態の店舗を展開することは以前からあった。両者の境界はあいまいで、地元ではどちらも「大型店」と認識されていたように思う。

専門量販店も脅威となった。家電、家具、書籍などかつて百貨店の上層階にあったような業種が専門量販店と競合する。近隣であれ郊外であれ、専門量販店の出店によって同じ業種の百貨店の売り場は少なからず影響を受けた。それで百貨店のワンフロアが専門量販店に置き換わったり、百貨店自体が専門店ビルに転換したりすることもあった。閉店する百貨店をよく見ると、業態は既に百貨店ではなく、ずいぶん前から実態的な専門店ビルになっているケースも多い。

ショッピングモールや専門量販店は郊外立地が多いが、工場跡地など中心市街地やその近辺に出店するケースもある。こうした事実から、単なる中心市街地vs郊外の立地間競争にとらわれると本質を見誤る。業態間、あるいは店と店との競争関係を念頭に置いて復活を講じる必要があるのだ。

今回の閉店ラッシュとこれまでとの決定的な違い

第3はチャネル間競争である。車社会化で大きく伸びた郊外立地のショッピングモール、専門量販店も安穏とはしていられない。最近はテナントが集まらず「シャッター街」になるショッピングモールもある。衆目の一致するところ、アマゾンはじめ通販サイトが影響している。

ビールを思い浮かべれば、かつては郊外の酒販店に車を乗り付けケースでまとめ買いしたものだが、今は通販サイトで注文し宅配してもらう家庭も増えている。どんなものか明確に知っているもの、あるいは一度買ったものを繰り返して買うなら通販サイトで十分だ。

2000年以降に相次ぐ地方百貨店の閉店の背後には、車社会化とショッピングモール、専門量販店など新業態の発展があった。こうした構造変化のうえに、ITバブル崩壊やリーマンショックなどのきっかけがあって閉店に至った。最近の、3度目の閉店ラッシュは不景気をきっかけにしたものとは少し違う。ここで通販サイトの影響があるとすれば一過性のものではなく当面同じ傾向が続くことになる。