【田原】もう1つ、辞めている期間のことでお聞きしたい。プロ野球の球団を買収したのが11年。これも南場さんがいない間でした。
【南場】DeNAにとっては素晴らしくいいことでした。それまでDeNAは、赤字になって潰れるかもしれないと思って、自分たちの成長のことばかり考えてきた。でも球団というファンのいる公共のものをお預かりして、12球団が集まった中の1メンバーとしてプロ野球を盛り上げていくんだという意識を持てた。公感とでも言えばいいのかな。それまで足りなかった意識を持てて、少し大人になれました。ただ、買収は右腕のCFO(買収時は会長)だった春田(真氏、現ベータカタリストCEO)が言い出しっぺで、私は最初反対していたんですけどね。
【田原】そうなんですか?
【南場】春田は野球が好きで、TBSさんが手放すかもしれないという話に飛びついたんです。それに対して「そんな派手なことをやる必要はない。地に足をつけて地味に本業をやろうよ」というのが私の反応。1年目は春田も諦めてくれました。しかしその後、私は看病で退任。その間も追いかけていたようで、2年目に社長の守安(功氏)と一緒にやってきて、「ぜひやりたい」と。懸念事項を2人にいろいろぶつけてみたら、彼らはちゃんと答えられたので、「じゃあ、思っているとおりにやったら?」という話になりました。
最下位の下はない。上に上がるしかないからおもしろい
【田原】そのころ球団は何位くらい?
【南場】ずっと最下位です。横浜スタジアムも閑古鳥が鳴いていました。
【田原】最下位球団を買っていいの?
【南場】いいんです。田原さん、最下位の下はないんですよ。上に上がるしかないからおもしろいじゃないですか!
【田原】なるほど。球団はもう黒字?
【南場】黒字です。それに加えて、お客様の喜んでいる顔が見えることがよかった。ネットって閉じてるじゃないですか。それが悪いことではないですが、お客様が喜んでいる表情が見えにくいんですね。でも、球団を持ってそれがリアルに見えた。それだけでも涙が出るくらいに感動しました。
【田原】ところで、いまDeNAはゲーム以外にもいろいろやっていますね。
【南場】そうですね。モビリティやヘルスケアもやっているし、スポーツも野球だけじゃなくてバスケットやランニングクラブもやっています。最近は横浜市庁舎街区の再開発を応札して、他のパートナーさんたちと一緒に開発する予定です。ゲーム以外にも手広くやってます。じつはDeNAという社名のeはeコマースを意味していましたが、ピボットするうちにeコマース事業は少なくなりました(笑)。