【田原】2006年に「モバゲータウン」を始められる。

【南場】モバゲーは、携帯電話のSNSです。ユーザーがモバゲーというサイトに集まって、アバターとかゲームを楽しんだり、誰かと共通の話題で盛り上がってコミュニケーションを取ります。これもうまくいって、会員数が5000万人以上になりました。

【田原】そういうアイデアは誰が考えるのですか?

【南場】私じゃないですよ。うまくいったサービスは、社員が考えてくれたものばかりです。

【田原】そこがおもしろい。伊藤忠商事の社長だった丹羽宇一郎さんは、「日本のサラリーマンは経営者の意に沿うことしか言わない」と言っていました。東芝の粉飾だって社員はわかっていたけど、誰も何も言わなかった。それが日本の普通の会社だけど、DeNAは社員が自分のアイデアを話すんだ。

【南場】会社が沈みそうだったからじゃないですか。なおかつ、トップが天才ではなく、「南場の言うことは正しい」と思わせるようなカリスマ性もない。だから社員は自分たちで必死に考えるしかなかったんでしょう。

【田原】トップがそういうことを言えるのもおもしろい。自分に欠陥があると堂々と言える経営者は日本にほとんどいません。海外だと、グーグルの共同創業者、セルゲイ・ブリンが同じことを言っていたかな。取材したのは20年以上前ですが、「自分は欠陥だらけの人間だから、社員たちにアイデアを出してもらう必要がある。20%ルールも、そのためにある」と言ってました。

【南場】格が違うので一緒にされると困ります。私が言っていたのは、「この船はこのままだと沈むぞ。死ぬほど働いて助けてくれ!」でしたから(笑)。

野球チームを持って、会社が大人になった

【田原】DeNAは大きく成長したものの、11年、南場さんはご主人が病気になって、看病のために代表を退かれる。これも日本の企業では珍しいですね。

【南場】ブン投げるようにして無責任に辞めたので、自慢できる話ではないんです。ただ、当時からチームで意思決定をしていて、私がやっていた判断はほかの人でもできる状態にはなっていました。

【田原】残念ながらご主人は5年後にお亡くなりになる。その後また代表に戻られましたね。

【南場】最初の2年は家にいましたが、3年目からは状態がよくなってきたので常勤で会社に戻り、亡くなった後に代取に戻りました。ちょうど会社が苦難の時期にありまして……。

【田原】WELQのキュレーションサイトの事件ですね。

【南場】私が記者会見をしたのは、主人が亡くなった2日後でした。

【田原】いま思い返すと、あの事件はどうして起こったんですか?

【南場】管理が甘かったんです。小さな会社を買収しましたが、買収後にしっかり経営をするということを甘く見ていたんだと思います。