人間に対してどれだけ“沸騰”できるか

【馬場】何がイノベーションかというと、クラブ制と国別対抗という仕組みを両立させているということ。どんなにW杯が盛り上がっても、サッカー界はクラブをやめていないわけですよ。選手はクラブに所属しながら、W杯での優勝を目指している。この両立がビジネスでも重要。これをやらないと組織は変わりません。

だからどんなにみなさんが理解しても、上の人たちが理解しないとダメ。「ONE JAPAN」は若手社員中心で、今この会場には若い人が多いけど、おじさんたちを連れて来られるイベントにしたほうがいい。「こんなすごい人たちが集まっちゃった」って話題になるくらいの。日本企業の社長なんて探索好きだから来てくれますよ。でも社長だけが応援してくれても変わらなくて。役員とか部長とかも連れてこないと。そうでもして理解させた方が会社のためにもなります。

今いる会社に身を置くのがムダかどうかは、やってみないと分からない側面もある。どのように動けばいいかは、大企業にいながら一歩踏み出した若手社員の事例集であるONE JAPANの書籍が参考になる。ONE JAPAN『仕事はもっと楽しくできる』(プレジデント社)

【冨山】最後に問われるのは、みなさん自身が、人間に対してどれだけ“沸騰”できるかということ。ものごとを大きく変えていく時は、いろんな人の人生や生活に光と影をつくることになるでしょう。

人は影が多いと思ったら必死で抵抗するし、大企業の場合は多くの人生がかかっている。経営者はそういうことも眺めながらどうしようかと考えています。だからこそ、最終的にはみなさん一人ひとりが、自分の人生も含めて、人間というものに対して深い洞察力を持って、理解して、思いを持てるかどうかが大事になってくる。

それが面倒な人は“こども”のままでいればいいし、他人の人生に関わっていくことに本気で喜びを感じられる人は、“おとな”のマネジメントをすればいい。

人間的な情熱や無邪気さと深い洞察力によって「両利きマインド」を身につけたら、結構イケてる50代になれるんじゃないかな。期待しています。

(構成=小林 こず恵)
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