関西電力幹部らが福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた問題。岩根茂樹社長は記者会見で「不適切だが、違法ではない」などと繰り返した。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「コンプライアンスを守りさえすれば『それでよし』なのか。まるで時代劇に出てくる悪代官のようだ」という――。
写真=時事通信フォト
記者会見する関西電力の岩根茂樹社長(右)と八木誠会長=2019年10月2日、大阪市福島区

関電と元助役は、まるで時代劇の悪代官と越後屋の関係

「関電よ、おまえもか」

こう心の中でつぶやいた人はどれほどいるだろう。日産自動車のカルロス・ゴーン前会長による特別背任事件に続いて、関西経済界を代表する関西電力の不祥事が発覚した。

関西電力の幹部20人が福井県高浜町の元助役から多額の金品を受け取っていた問題。関電側の当事者は岩根茂樹社長、八木誠会長ら20人に及ぶという。岩根社長、八木会長は会見をひらき、釈明に追われたが、自身の辞任については否定した。

報道によると、受領したのは約3億2000万円分の金品。例えば、50万円もするスーツ仕立券計75着分が送られてきて、うち61着が消費されたという。菓子折りの底には金貨が忍ばせてあったらしい。まるで時代劇の中の悪代官と越後屋との関係性を見ているようである。

「ワシを軽く見るなよ」
「お前の家にダンプを突っ込ませてやる」

元助役がこうすごむと金品を受け取らざるを得なかったと関電側は釈明する。しかし、助役はすでに亡くなっている。「死人に口無し」状態の釈明のどこに、説得力があるというのだろう。岩根社長はあたかも関電側が被害者であることを強調し、

「不適切だが、違法ではなかった」

と言い放った。

コンプライアンスを守りさえすれば「それでよし」なのか

岩根社長が言うように、コンプライアンスを守りさえすれば「それでよし」なのか。法は人間社会における「最低限の」ルールである。ほんらいは法令遵守すべきラインの、“もっと前の段階”で「倫理・道徳観に基づいた自己抑制」を効かせなければならないはずだ。

わかりやすくいえば「お天道様が見ている」「悪いことをすればバチが当たる」「ご先祖様に申し訳が立たない」といったような「見えざる価値」を日本人は大切にしてきた。