夢中になると「学びのセンサー」が全開に

この違いは何かを考えてみたとき、私はこれまでたくさんのご家庭を見てきた経験から、一つのことに気づきました。それは、小さい時にどれだけ夢中になれる体験をしてきたかどうかが、とても大切だということです。

4年生の段階では、勉強のペースがつかめなかったヒロキくん。お母さんに話を聞くと、小学校低学年までは勉強は学校の宿題だけで、あとは毎日外遊びをしていたと言います。家に帰ってくると、いろいろな虫を捕まえてきては「この虫の羽根、キレイな色をしているでしょう」と得意気に見せていました。それを見たお母さんは「わぁ、ほんとね。この虫なんていう名前なのかしら?」と、一緒に図鑑を広げて調べていたそうです。

子どもは楽しくて夢中になれるものに対しては、学びのセンサーが全開になります。ヒロキくんにとって虫取りは「遊び」でも、目の前にあるいろいろなことに興味を持ち、それを知りたいと行動に移し、自分の知識として蓄えてきた。このことが、のちの勉強へとつながっていったのです。

たっぷり遊んだ子には「強い心」が備わる

例えば、塾で理科の生物を勉強したとき、先生の話を聞きながら、「あっ! あのときに見つけた虫にはこういう特徴があるから、このグループなのだな」と理解が深まる。このように、自分の体験とつながってくるからおもしろく感じるし、頭にも残りやすくなります。塾に通い出した当初は、テキスト主体の勉強に慣れずに戸惑っていたヒロキくんでしたが、勝手がわかってくるにつれて大きく伸びたのは、この「生きた理解」があったからです。

そして、もう一つよかったのは、親御さんが夢中になるわが子の姿を温かく見守っていたことです。もし、ヒロキくんのお母さんが「虫なんて捕まえていないで、勉強しなさい!」と言っていたら、ヒロキくんはここまで伸びなかったでしょう。子どもはお母さんとお父さんが大好き。親の愛情を感じながら、自分が好きなことをして遊ぶというのは、子どもにとって何よりの安心感と幸福感をもたらします。

こうしたプラスの感情をベースに持ちながら幼少期にたっぷり遊んで学んだ子は必ず後伸びします。幼少期に「満足がいくまで遊んだ」「納得がいくまでやり遂げた」といった経験をしてきた子は、たとえ途中で壁にぶつかっても「自分ならなんとか乗り越えられる」という強い心が後押しします。そして、ここぞというときに、ものすごい集中力を発揮するのです。