来年2020年4月から公立小学校での英語教育が本格化する。これで日本人の「英語嫌い」は解決するのだろうか。立教大学名誉教授の鳥飼玖美子氏は、一貫して英語教育の早期実施に対して懸念を表明している。イーオンの三宅社長が、そのわけを聞いた——。(第1回)
鳥飼玖美子氏
撮影=原 貴彦
立教大学名誉教授の鳥飼玖美子氏

一貫校での英語教育は機能していない

【三宅義和(イーオン社長)】公立小学校で、5年生以上を対象に実施されてきた英語活動(※1)が2020年4月から3年生に前倒しされ、さらに5年生からは教科として英語を学びはじめることになります。鳥飼先生は小学校での英語教育に懸念を表明されていらっしゃいます。それは指導者不足が理由なのか、そもそも小学校で英語を教えることそのものに問題があるからなのか、どちらでしょう?

※1:教科ではなく、英語に慣れ親しむための活動

【鳥飼玖美子(立教大学名誉教授)】両方です。ご家庭で「うちの子には早くから英語を学ばせたい」と思い、小さいときから学ばせるのは自由です。私はしませんが、それは個々の家庭の判断です。ただ、公立小学校への導入についてはもっと慎重であるべきだったと思います。

「グローバル時代だから英語を早く教え、使えるようにする」というのが政府の見解でしょうが、それだけでは根拠として弱く、いじめや虐待、教員の過重負担などいろいろな問題を抱えるなかで、公立小学校に英語教育を導入する論拠が十分に得られたとは到底思えなかったので反対しました。

昔から私立では、小学校から英語を教える学校がたくさんあります。とくに小中高一貫校ですね。しかし、実際にはその多くは、期待するほどの効果は上げていません。もし私立小学校の英語教育が成功しているのなら、中学に上がった段階で外部から入学してくる生徒との間に大きな差がつくはずですが、ほとんどつかないのです。もちろん、最初は差があります。でも、あっという間に差が縮まって、半年も経てば外部から受験して入った生徒が逆転するケースが多い。これは全国の私立一貫校でみかける光景です。