宇宙飛行士は仕事とプライベートのバランスをどうやって取っているのか。働きながら子育てをした宇宙飛行士の山崎直子氏に、イーオンの三宅社長が聞いた――。(第3回)
宇宙飛行士の山崎直子氏
撮影=原 貴彦
宇宙飛行士の山崎直子氏

仕事とプライベートのバランスは長い目で考える

【三宅義和(イーオン社長)】働き方についてお伺いしたいのですが、仕事とプライベートのバランスをどう取るかという点において、山崎さんはどういったことを意識されていますか?

【山崎直子(宇宙飛行士)】長い目で考えることですね。それは常に意識しています。たとえば私も育児休暇を取らせていただいた時期は、職場に対して申し訳ないという思いや、訓練が遅れてしまうのではないかといった焦りがあったことはたしかです。でも、長い目で考えれば、別にたいしたことはない。やはり人生は長いので、全体でバランスを取れればいいかなと思います。

【三宅】なるほど。常にバランスを取るのも逆に大変ですからね。

【山崎】そう思います。

【三宅】実際に働きながら子育てをするうえでご苦労はありましたか?

【山崎】もちろん一筋縄ではいきません。宇宙飛行士の仕事は、宇宙に行っている間は華やかに見えますが、実際はほとんどの時間を地道な訓練とほかの宇宙飛行士のサポート業務に費やします。私も試験に合格してから宇宙に行くまで11年かかりました。このように非常に長丁場で、かつ変則的ですから、自分の都合と合わないシチュエーションも多々あります。夜勤もあれば、出張もあれば、海外勤務もある。そういう意味で、世の中に存在する働くうえでの課題を凝縮したような形で経験したかなと思います。

【三宅】困ったことに直面したときはどう克服されたのですか?

【山崎】自分一人では何もできないので、家族や保育園の先生など、本当にいろいろな人に助けていただきました。こうしたサポートがなかったら続けられなかったと思います。その点、自分は恵まれていたと思いますし、感謝の気持ちしかありません。

肩書に「女性」をつけるのは日本だけ

【三宅】そうでしたか。ちなみに山崎さんがメディアで取り上げられるときは「女性宇宙飛行士」という肩書がつくことがほとんどだと思うのですが、それに対して違和感を覚えることはありますか?

【山崎】それはすごく感じます。たしかに女性の宇宙飛行士は世界的にまだ少ないです。全体の1割しかいないのでメジャーになったというわけではないのですが、「女性」という枕をつけたがるのは日本独特かなという印象を持っています。外国ではあまりないですね。もちろんそれは宇宙飛行士に限った話ではなく、議員を取り上げるときも日本ではよく「女性議員」といった表現をしますよね。

【三宅】そもそも「女性の力を活用する」といった表現が少し変ですからね。私どもの会社は女性が非常に多いのですが、やる気も高いし、責任感も強いし、本当に優秀です。女性社員がいないと組織が成り立ちません。女性が活躍するのは当たり前のことですから、そういう風潮も近いうちになくなっていくのでしょうね。

【山崎】そうなってほしいですね。アメリカでも100年ぐらい前は女性参政権がなかったわけで、そういった時期を経て今に至っている。そう考えると、ことさら「女性」を強調する風潮は変革の過渡期ならではの現象なのかもしれません。