本格運用OKから病原体輸入まで4年も経過
産経新聞はBSL4施設が本格稼働することになった時点で、こんな社説(主張、2015年8月11日付)をまとめている。
「感染症研究施設 高い信頼得て運用拡大を」と見出しを付けて主張している。
「病原体について詳しく調べ、患者の治療に役立てられる。日本の感染症対策にとって大きな前進である」
「当面は病原体の検査が中心だが、治療薬やワクチンの研究開発など次の段階につなげるためにも、透明性を高めることで信頼性を増していきたい」
エボラウイルスなどの輸入が今年8月というから、BSL4施設レベルの危険な病原体の取り扱いがOKになってからまる4年も経過しているのだ。いかに厚労省の動きが遅かったかが、分かるだろう。産経社説はこうも指摘する。
「感染症対策上の国際的責任も果たせるようになる意義は大きい」
厚労省の本音はここにある。日本は国際社会から非難されたくないのである。最後に産経社説は訴える。
「航空機などによって感染症は地球規模で広がる。新型肺炎のSARS(サーズ)や中東呼吸器症候群のMERS(マーズ)も出現している。国際社会ではバイオテロの危険性も指摘されている」
「脅威に立ち向かうためにも安全に病原体を研究できるBSL4施設を適正に運用していきたい」
運用が適正であれば、施設周辺の住民も納得するだろう。感染症研究施設が私たち国民の命と健康を守るためのものだからである。
なぜ読売以外は社説で取り上げないのか
沙鴎一歩の知る限り、最近、BSL4施設をストレートに社説として取り上げたのは読売新聞だけである。各社の社説が同じテーマをこぞって取り上げることで、さまざまな角度から論議が巻き起こる。それは社会を変える原動力になり得る。社説が少ないのは、非常に残念である。
2019年6月11日付の読売社説は「病原体の輸入 厳重管理で感染症対策に生かせ」との見出しを掲げる。読売社説はこう書き出す。
「危険な感染症が国内で発生した場合に備えて、対策を講じておくことが大切である」
これは問題ない。問題はこの後である。