カギ2「高度化する消費者ニーズへの徹底的な対応」――先行してサービスを進化させる
ベゾスは長年にわたり、消費者には3つの重要なニーズがあると言い続けています。それは「低価格」「豊富な品揃え」「迅速な配達」です。そしてベゾスは「消費者が昔も今も将来も、これらのニーズを求めることは変わらない」とも述べています。
見逃せないのは、これら3つのニーズが時代と共に先鋭化してきているということです。消費者は、どんなにアマゾンがサービスを充実させても「もう十分に安くなった」「これ以上の品揃えは要らない」「商品の配達は今のままでいい」と満足することはありません。人は、利便性が高まれば高まるほど、それまで感じていなかったはずの不便を感じ取るようになるからです。
たとえば、スマホで何でも手元で調べられるようになった今、少しでも通信が遅ければ人はストレスを感じます。あるいは電子マネーを使って一瞬で支払いが完結するようになったことにより、レジに並んでいて前の人が現金で払っているのを見ると、小銭を数えるのに少々時間がかかっている程度のことでイライラする人もいるはずです。
つまりアマゾンがどれだけ「低価格」「豊富な品揃え」「迅速な配達」について改善しても、消費者はニーズをさらに先鋭化させて「もっと低価格に」「もっと豊富な品揃えを」「もっと迅速な配達を」と望み続けるわけです。アマゾンはそれがわかっているからこそ、これまで消費者ニーズの先鋭化に先行して商品やサービスを進化させてきたのでしょう。そしてこれからも、その目指すところは変わらないはずです。
カギ3「大胆なビジョン×高速PDCA」――速く失敗して速く改善する経営
アマゾンの進化のカギとして最後にご紹介したいのが「大胆なビジョン×高速PDCA」です。ビジネスにおいて重要なのは、最初に「大胆なビジョンを立てる」ことです。そしてビジョンを打ち立てたならば、次に問題になるのは「それをどう実現するか」です。アマゾンでは、その実現方法として「高速なPDCA」が徹底されています。つまり、大胆なビジョンから逆算して「今日は何をすべきなのか」を明確にし、高速のPDCA(Plan=計画、Do=実行、Check=評価、Action=改善)サイクルを回して効率を高めながらビジョンに向かって邁進していくのです。
もともとウェブの世界では「何人の客がサイトを訪れたのか」「そのうち何人がボタンをクリックしたか」「そのうち何人が購入したのか」といったユーザーの行動を分析し、サイトのデザインや商品の配置を変えるといった「PDCAの高速回転」が根づいています。アマゾンでは、大胆なビジョンを「今日、何をするか」までブレイクダウンした上でこの高速PDCAを回すという「合わせ技」を使い、速く失敗して速く改善する経営、それによってイノベーションを何度も起こし急成長する経営を実現しているのです。