GAFAはなぜ急成長できたのか。読売新聞記者の小林泰明さんは「GAFAは自社のサービスや商品を有利に展開できるよう、巨額を投じてロビー活動を行っている。そして日本でもロビーの網は広がっている」という――。(第2回)

※本稿は、小林泰明『国家は巨大ITに勝てるのか』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

オフィスで握手を交わす2人のビジネスマン
写真=iStock.com/Hiraman
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元ホワイトハウス報道官がアマゾンでやったこと

ロビーにまつわる話は興味深いものが多い。ここではアマゾン、グーグル、アップルのロビーに関する話を紹介していきたい。

アマゾンはロビー活動の王者だ。2022年のロビー費は2138万ドルで民間企業トップ。読売新聞の調査では、2021年は2059万ドル、2019年は1679万ドルで、いずれも民間企業で最大だった。

アマゾンのロビー活動はビジネス同様、威圧的で、首都ワシントンで反感を買っているという。それを2022年まで率いていたのが上級副社長のジェイ・カーニーだ。カーニーはオバマ政権でホワイトハウスの報道官を務め、副大統領だったバイデンの広報担当ディレクターを務めたこともある。2015年、アマゾンの広報・政府渉外の統括者に転じ、社内に「ロビー活動の巨大組織を構築した」という。彼の加入後、アマゾンはロビー活動を拡大した。

ロイター通信は2021年、アマゾンが音声サービス「アレクサ」などの情報収集に影響が出ないよう、各州のプライバシー規制を骨抜きにするようなロビー活動を展開したと報じた。ロイターによると、カーニーは、「アレクサの成長を阻害する米国やEUの規制・法律を変更、または阻止する」ことを目標に、大規模なロビー活動を展開した。多くの消費者の音声データを蓄積し、技術開発で優位に立つためだったという。

「花への水やり」プログラムとは

アマゾンに好意的な政治家を増やす活動は「花への水やり」プログラムと呼ばれ、カーニーはこの活動を拡大し、政治家との交流を大幅に増やしていった。プログラムの目的は「手入れの行き届いた庭」を作ることにあり、カーニーらは政治献金や会合、アマゾンの施設ツアーなどを通じて多くの政治家を取り込んでいったという。

カーニーは2022年、アマゾンを退職し、エアビーアンドビーの政策責任者に転じた。強引な手法が敬遠されたとの見方もある。

「アマゾンはワシントンで攻撃的な姿勢をとっていると批判されているが、多くのアマゾン幹部はカーニー氏のスタイルが原因だと考えている」
「ホワイトハウスで彼の力は麻痺していた。彼の元上司バイデンは、しばしばアマゾンを公然と批判し、ホワイトハウスのイベントでもアマゾンは敬遠されがちだった」

ウォール・ストリート・ジャーナルはカーニーのアマゾン退職をそう報じている。