会議の生産性を上げるには、どうすればいいのか。アップル・ジャパン元社長の山元賢治さんは「世界中を見渡しても、会議中に寝ているのは日本人だけだ。会議の参加者は『バリューを出せない人は給料泥棒』『会議は意思決定のための場』という認識を持つべきだ」という――。

※本稿は、山元賢治『世界の先人たちに学ぶ 次世代リーダー脳』(日刊現代)の一部を再編集したものです。

アップルの世界開発者会議で基調講演を行うスティーブ・ジョブズ氏
アップルの世界開発者会議で基調講演を行うスティーブ・ジョブズ氏(写真=Ben Stanfield/CC-BY-SA-2.0/Wikimedia Commons

ジョブズは「会議に必要ない人」を退場させた

スティーブ・ジョブズは会議の冒頭で、その会議に必要ないと判断した相手を退場させていました。当事者意識を持ち、主体的に参加できる人だけを選抜していたからこそ、緊張感のある、生産性の高い会議ができていたのでしょう。

思い返せば、ジョブズほど当事者意識の高いリーダーを見たことがありません。一年に一度開催されるリーダー会議でも、必ず前日から会場に詰め、自らセットアップとリハーサルに励んでいたものです。

この姿勢は講演会でも同じでした。ジョブズが2005年、有楽町で講演したときのこと。前日のリハーサルでは、3時間にわたって「私はこう感じる。みんなはどうだ?」「私はこの資料を1ページ前にもっていきたい。全体の流れに影響はあるか?」などと、主語を“I”にし、積極的に意見を伝えていたのです。

ジョブズほどの人であれば、資料の作成からリハーサルまですべて部下に任せることもできたでしょう。それでも当事者意識を持ち、自らの手で一つひとつ作り上げる――。今でも鮮明に思い出せる、衝撃的なワンシーンでした。

主語を“I”にし、高い当事者意識を持って行動する。逃げない姿勢を貫き、いつでも責任を取る覚悟をする。リーダーであれば、この2つを常に意識してください。

日本のリーダーに足りないもの

残念ながら、日本では主語を“I”にできるリーダーをほとんど見かけません。周囲から「いい人」と思われたいという気持ちが強いのでしょう。

同様に、いつでも責任を取る覚悟ができている人もほとんどいないようですね。なぜなら誰しも、責任を取るのは怖いからです。最悪の場合、リーダーの立場から降ろされたり、会社を退職したりすることになるかもしれませんから。

そうした覚悟をするのは誰でも怖いからこそ、チャンスです。

高い当事者意識を持って行動することができたなら、周囲の人があなたを見る目はみるみるうちに変わっていくでしょう。

上層部は、あなたをもっと引き上げたい、より重要な役職につけて幅広く活躍させたいと思うはずです。

同僚や後輩は、ぜひこの人に協力したい、この人のようになりたいと思ってくれるでしょう。

顧客や取引先は「この人から買いたい」「この人と一緒に仕事をしたい」「うちの会社で働いてくれないだろうか」と思うことでしょう。

意識を変えることで、あなたの市場価値はグンと大きく上がるはずです。