えげつない人材の引き抜き

アップルが2022年に米国でロビーに充てた金額は936万ドルと、GAFAの中では最も少ない。だが、私の印象では、アップルが最も効果的にロビー活動をしているようにみえる。それはCEO、ティム・クックの強力な「トップロビー」も関係しているだろう。

裏ではえげつないこともやっている。2021年、ワシントンのある議会スタッフの転職が注目を集めた。巨大ITの規制を検討する民主党上院議員、エイミー・クロブシャーの立法スタッフが退職し、アップルの対政府担当になったのだ。

クロブシャーはアップルのアップストアに対する規制を強く唱え、規制法案を提出していた。その手の内を知るスタッフが「反対側」のアップルに取り込まれる形になり、関係者に衝撃が走った。

アメリカだけではなく日本でも

他社より静かにロビー活動を展開してきたように見えるアップルだが、アップストアの規制法案に対しては、かなり積極的に対抗している。

「アップルのロビーマシンは、いかにしてジョージア州を攻略し、勝利したのか?」

米政治専門紙ポリティコは2021年、米ジョージア州など州議会でのアプリストア規制法案をめぐるアップルの激しいロビー活動を白日の下にさらした。同紙によると、ジョージア州の議員がアプリストア規制法案を提出すると、アップルは直ちに5人のロビイストを雇い、法案の反対運動を展開。ロビイストたちは法案をアップル寄りに修正するように働きかけ、勢いを削いだという。別の州の議員は「アップルは法案を潰すために脅迫し、多額の資金を使うことができた」と話したという。

州議会でアプリストアの規制法案が提出されるや否や、アップルが投資の約束や資金の引き揚げで議員に強い圧力をかけ、法案が失速する――複数の州で似たような事例が起きているという。

アップルはアップストアを規制する動きが強まる欧州でも2022年、グーグルを上回るトップクラスのロビー費を投じた。

そして、欧州と同様の規制を検討する日本でも、規制阻止に向けて政界関係者への働きかけを強めている。