巨大ITの規制で先行する欧州や米国

巨大IT企業(以下、巨大ITと表記)の規制に、日本もようやく重い腰を上げたようだ。

政府は、米アップルと米グーグルが実質的に支配するスマートフォンのアプリ市場の競争を促進するため、2強を規制する新しい法律「スマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)」を制定、今国会中にも成立、2025年中の施行をめざすことになった。

GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトの頭文字)のロゴ=2023年6月2日
写真=AFP/時事通信フォト
GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフトの頭文字)のロゴ=2023年6月2日

4月22日には、公正取引委員会が、グーグルに対し、旧ヤフー(現LINEヤフー)のネット広告配信を一部制限していたとして、独占禁止法(独禁法)に基づく初の行政処分を科した。

また、5月10日には、米X(旧ツィッター)やフェイスブックを運営する米メタを念頭に、ネット上の誹謗中傷の削除の迅速化を義務づける「改正プロバイダー責任制限法」(「情報流通プラットフォーム対処法」に改称)を成立させた。

これまでデジタル市場を席巻する巨大ITの寡占が起こすさまざまな弊害に対しては、当局の規制よりも巨大ITの自主的対応に委ねる「性善説」で対応してきたが、そんな生ぬるい手法ではもはや通用しない実態に気づき、矢継ぎ早にに巨大ITへの規制強化策を打ち出したといえる。

もっとも、そこに見えるのは、巨大ITの規制で先行する欧州や米国に置いていかれないように、必死で裾をつかもうとする幼な子の姿だ。

巨大ITと正面から闘う覚悟があるのか、本気でユーザーにメリットをもたらそうとしているのか、実効性が問われる。

岸田政権の「スマホ新法」の狙い

「スマホ新法」は、巨大ITによるスマホの基本ソフト(OS)やアプリ市場の寡占を規制する法律で、「指定事業者」がアプリストアや決済システムで他社の参入を妨害することを禁じ、違反すれば国内で対象となる関連分野の売上高の最大20%(独禁法では6%)を課徴金として科すことが主な柱。アプリ市場で新規参入による競争を促し、アプリ価格を引き下げる狙いがある。

「指定事業者」として念頭に置いているのは、アップルとグーグルだ。2社は、スマホ市場でOSとアプリストアを通じ、アプリの開発・流通や課金ルールを一方的に決められる支配的な立場にある。