「仕事がつまらない」という悩みが生まれる原因

人の「幸福感」について、僕は1つ思うことがあります。「やりがいを得られない」「仕事がつまらない」という悩みを抱く人は多いのですが、それは自分がこなした仕事が何の役に立っているのか、誰に届いているのかわからないからです。自分の仕事が誰かに「感謝されている」というフィードバックこそ、人が幸せを感じるために必要なこと。柳澤さんが実践する鎌倉資本主義は、小さな経済圏で人と人が感謝をし合える仕組みづくりの構築と言えます。

柳澤大輔『鎌倉資本主義』(プレジデント社)

そんな「鎌倉資本主義」を進めるOSの機能を果たしているのが、2013年に鎌倉に拠点を置くベンチャー企業の経営者が立ち上げた地域団体「カマコン」です。このカマコンから、鎌倉が抱える課題解決のためのプロジェクトがいくつも立ち上がりました。しかし、カマコンの活動が最初から鎌倉にしっくりなじんでいたわけではなかった。伝統があり先祖代々の名家も多い鎌倉で、若い人たちだけで盛り上がっている浮いた存在、という面も正直あったと思います。

その状況を変えたのが、2017年の「第69回鎌倉花火大会」でした。この年、鎌倉の夏の風物詩であり、地域の人たちが待ち望んでいる大イベントが、資金の問題で一時開催を危ぶまれたのです。そこで、カマコンのクラウドファンディングの仕組みを利用したところ、1000万円を超える協力金が集まりました。鎌倉の夏になくてはならない花火大会の実現に貢献したカマコンは、「1年と1日」を経て鎌倉のシチズンとしての居場所を得たのだと思います。

今後もシチズン(市民)としての持ち場を増やしていくであろう「鎌倉資本主義」の展開を、お隣の葉山から応援したいと思っています。

山口 周(やまぐち・しゅう)
コンサルタント
1970年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科卒業、同大学院文学研究科美学美術史学専攻修士課程修了。電通、ボストン・コンサルティング・グループ等を経て、コーン・フェリー・ヘイグループに参画。現在、同社のシニア・パートナー。専門はイノベーション、組織開発、人材/リーダーシップ育成。著書に『グーグルに勝つ広告モデル』(岡本一郎名義)『世界で最もイノベーティブな組織の作り方』『外資系コンサルの知的生産術』『劣化するオッサン社会の処方箋』(以上、光文社新書)、『武器になる哲学』(KADOKAWA)など。『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社新書)でビジネス書大賞2018準大賞、HRアワード2018最優秀賞(書籍部門)を受賞。
(構成=井上佳世 撮影=プレジデント社書籍編集部)
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