「リスクが高い手」でないと逆転されてしまう

さまざまな「名言」が飛び出したひふみんとの対談だったが、私が一番「凄い」と思ったのは、次の一言である。「将棋においては、最もいい手は、リスクが高い手なのです」

ひふみんによると、将棋は本当にぎりぎりのところでのせめぎ合いで、リスクを取らないと局面が打開できないし、勝利することもできない。だから、リスクを取り続けることが大切だというのである。

自分が有利だからといって、リスクを恐れて「守り」に入ると、いつの間にか盛り返されて逆転されてしまうこともあるのだという。

「だから、勇気を持って、常にリスクが高いけれども最善の手を指し続ける必要があるのです」

ひふみんの名言は、将棋だけでなく、人生全体に通じることだろう。

時代は常に動いている。私たちの人生も、ステージが次々と変わる。

守りに入ってしまうと、最善の生き方をしているとはいえない。とりわけ、人工知能や自動運転、仮想通貨など、時代を一新させるテクノロジーが次々と登場している「シンギュラリティー」の時代には、ある程度のリスクを取らないと最善とはいえない。

むろん、闇雲にリスクを取ればいいというわけではない。環境を読み、データを集め、批判的思考をして、論理的に考える。さらには自分が求めているものは何か、感情の奥底を見つめる。

そのような「総合力」があってこそ、初めてリスクの高い最善手がわかる。

ひふみんは、まさに、将棋という舞台で、常に「最善手」を探してきた。全身全霊で。

名言には人生が表れる。ひふみんの叡智に触れたよろこびが、会場を満たした。

(写真=AFLO)
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