いま将棋が注目を集め、街の将棋教室はいっぱいになっているそうです。バラエティでもおなじみになった「ひふみん」こと加藤一二三さんは、「将棋は何歳からでも楽しく始められる」と説きます。「ひふみん」が教える、親子で楽しく将棋をする秘訣とは――。

大人も子どもも「将棋」に興味津々

こんにちは、「ひふみん」こと、加藤一二三です。

2017年は、私の引退やその後のテレビ出演、また将棋界で初のデビュー戦以来29連勝を達成した中学生棋士、藤井聡太四段の大活躍のおかげもあってか、将棋界が非常に注目されています。私もテレビや講演会などで、喜んで将棋についてお話させていただいています。

『天才棋士 加藤一二三 挑み続ける人生』(著・加藤一二三/日本実業出版社)

また、最近では町を歩いていると「ひふみん!」と声をかけていただく機会も増え、大人の方から「将棋をはじめたいのですが……」といった声を聞くことも多いです。今回は、私の近著『天才棋士 加藤一二三 挑み続ける人生』(日本実業出版社)の中で語りきれなかった、大人も子どもも楽しめる将棋の歴史や魅力についてご紹介したいと思います。

名人は「世襲制」から「実力制」へ

もともと将棋は、「チャトランガ」というボードゲームとして古代インドに生まれ、中国を経由して日本に入ってきたと言われています。駒を五角形にしたり、とった駒を使えたりするよう、日本人が今の将棋の形に改良して親しんできました。

江戸時代、徳川幕府が将棋を文化政策として取り入れ、将棋の名人制度ができました。「名人」は終身の称号であり、名人が亡くなると次の子どもが継ぐという世襲制でした。明治維新になり家元制および世襲制の名人は廃止されたものの、年功により推挙される「推薦名人制」に変わっただけでした。その後名人戦ができてプロ棋士が存在することになりました。さらに昭和になり毎日新聞社が実力制名人制度を提案し、将棋連盟と合意を取ってできた制度、それが将棋界発展の礎になっています。

昭和12年の第1期名人が木村義雄名人で、当時の将棋界のトップでした。私自身も昭和57年に名人になっています。また、私は、実力制第1期名人の木村さんから、今の名人である佐藤天彦さんまで、私自身を除く「すべての名人経験者12名と対局経験がある唯一の棋士」という記録を持っています。