窓ふきや換気扇の掃除は大掃除の範疇だからダメ
買い物に関しては、買う店を選ぶこともできないそうです。
「食料品を買うスーパーも家から一番近いところしか行けません。たとえばAとBという2軒のスーパーが家からほぼ同じ距離にあった場合は、好きなほうを指定してもらっても構いません。しかし、Bのほうが明らかに遠い場合はAにしか行けないんです。利用者さんが生活援助を受ける以前、“Bのほうが魚の鮮度がいい、惣菜がおいしい”といった理由でBに通っていたとしても応じられません」(Iさん)
また、薬は医師に処方してもらったものに限り買うことができますが、ドラッグストアで売られている市販の薬は買えないといいます。たとえば、毎食後、服用するのを習慣にしていた胃薬も買えないそうです。
掃除にも、いろいろな縛りがあります。
掃除できるのは要介護者が使う部屋だけ。窓ふきや換気扇の掃除は日常生活に必要ではなく、大掃除の範疇に入るからダメなのだそうです。同じように、庭の落ち葉を掃いたり、庭木の手入れをしたりするのも不可とのこと。
「必要最小限のところしか手をつけられないですから、家がだんだん荒れた感じになってくるんです。お元気な頃、きれい好きだった方の場合は見ていて気の毒になります。私は昔、ヘルパーをしていたんですが、窓が汚れたままになっているのを悲しそうに見ている方がいましてね。床をモップでふく動作の流れで窓をふいたことがあります」(Yさん)
▼「規則」と「利用者の気持ち」との板ばさみ
ホームヘルパーは「規則」と「利用者の気持ち」との板ばさみの中で仕事をしているようです。
介護保険の目的は、自立した日常生活を営むことができるよう必要なサービスを行うことですが、Yさんの話を聞くと、ただでさえ弱っている要介護者の心の支えを失わせてしまいますます自立した生活を遠ざけてしまうのではないかと感じます。
とはいえ、制度や規則をつくる側から見れば、「ここまではできるが、ここから先はできない」という明確な線引きをしておかなければ収拾がつかなくなるというのもわかります。