なぜ、弁護人が被告人を“罵倒”するのか?

3)は非常時の対応。実際の裁判で、弁護人はときに被告人を守るため、あえて感情的に振る舞い、被告人を罵倒することがあるのだ。被告人の味方なのにわざわざそんなことをする理由は、検察官の機先を制し、それ以上の追求をさせないためだと思われる。

部下とあなたと上役の関係は、被告人と代理人と裁判官の関係に近い。被害者の代理人である検察官が欠けているのだ。怒りが激しい場合、上役が検察官役となって部下を責めるパターンに陥ることがあるのはそのためだが、本当の被害者ではないからその追求は的外れの感情論になりがち。つまりは不毛。上役だってそんなことは百も承知なのだが、許されないミスなんだということを強調せねば幕が引けない。

そこで、その役をあなたが受け持つ。上役の代わりに部下を叱咤し、会社に迷惑をかけたことを部下に納得させるミッションである。このときに、部下のミスは私の責任です、などと上役に媚を売ってはならない。部下や上役から「保身に走った」と誤解されてもかまわないから、過剰なくらい感情むき出し、上役から「それくらいでいいだろう」と制されるくらいの迫力を出したい。

その後のフォローも大事だ。

「以後気をつけろ」で解散となった後、上役には「出過ぎた真似をしました」と詫び、部下には「悪かったな。あの上役は言い訳を何より嫌うから」と声をかけておく。すぐに理解はされないかもしれないが、1)で取ったクールな態度と3)の感情的な態度にはギャップがありすぎるから敏感な相手ならピンとくるはずだ。

ただし、この手はリスクを伴うので、手放したくない部下限定で使うことをおすすめする。ここで救わないとコイツはつぶれてしまう。退社しかねない。そんなとき用だ。

さて、あなたにはそこまでしたいと思える部下がいるだろうか?

▼今回の「教訓」
――ダメな奴 上手に弁護 株上がる
【解説】同じ有罪でも、実刑判決を回避し、「執行猶予付き」とすることができるか。そこに、弁護人の手腕がかかっている。それと同じように、直属の部下がミスを犯した場合、それに激怒する部長(上役)に対して、自分(中間管理職)がどう接すれば丸く収まるのか。上手に対処した暁には、上役からも、部下からも支持され、株が上がること必至である。
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