相性がいいのは「一点突破型」?

当たり前のことではありますが、すべての店がクラウドファンディングで資金や潜在顧客を獲得できるわけではありません。では、クラウドファンディングに向くのはどのようなタイプの飲食店でしょうか? それは「極めて強いキャラを持った店」と言えます。プロジェクトの概要を知った人が「うわー、そんな店ができたら、ぜひ行きたい!」と思えるかどうかが最大のポイントです。

繁盛店には2つのタイプがあります。1つは、特筆するものはないけれど、味やサービス、内装など店を構成するさまざまな要素がどれも外さない「バランス型」。そしてもう1つは、トータルの完成度が高いとは限らないが、強烈な魅力を持っている「一点突破型」です。前者はミシュランガイドで星を獲得するような店や老舗居酒屋、後者は「餃子のうまい中華料理店」や「夜景が素晴らしいバー」などが挙げられます。この観点においては、クラウドファンディングは強いコンセプトやビジュアルを持つ「一点突破型」、すなわち「キャラの濃い店」との相性がよいのは間違いありません。

ちなみに資金が集まらないプロジェクトによくあるタイプとして、「ソーシャルグッド系」が挙げられます。ソーシャルグッド系飲食店とは「有機野菜を楽しめる」「地域に雇用を生む」「伝統建築を残す」「恵まれない人の役に立つ」のようなメッセージを掲げたものです。そうしたプロジェクトを通じて世の中に貢献したいという気持ちは尊重すべきものです。

しかし、そのこととクラウドファンディングとして成立するかは別問題です。現時点では食欲をがつんと刺激するような強いメッセージ性を持っていない限り、資金を集めることが難しいという現実があるようです。飲食店におけるクラウドファンディングの本質は、「そもそも強い魅力を持っている飲食店のアイディアにとって、爆発的なスタートダッシュが可能になる」という点にあるのかもしれません。

 

子安大輔(こやす・だいすけ)●カゲン取締役、飲食コンサルタント。1976年生まれ、神奈川県出身。99年東京大学経済学部を卒業後、博報堂入社。食品や飲料、金融などのマーケティング戦略立案に携わる。2003年に飲食業界に転身し、中村悌二氏と共同でカゲンを設立。飲食店や商業施設のプロデュースやコンサルティングを中心に、食に関する企画業務を広く手がけている。著書に、『「お通し」はなぜ必ず出るのか』『ラー油とハイボール』。
株式会社カゲン http://www.kagen.biz/

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