「どうか皆様の力を貸してください」
東京・上野の国立科学博物館が、500万点を超える標本や資料の管理、収蔵などにあてるために、クラウドファンディング(CF)で1億円の支援を募ったところ、わずか9時間半で目標額に達した。支援金は増え続け、すでに7億1300万円(8月25日現在)を超えている。締め切りの11月5日までの間に、さらに増えると思われる。なぜ「国立」と冠した科学博物館が一般の人々に支援を求めたのか。
国立科学博物館は1877年創立の自然史・科学技術史に関する総合科学博物館。標本や資料の収集・保管・展示、調査・研究などを行っており、子どもから大人まで楽しめる博物館として人気を博している。2001年には政府の行財政改革の一環で、文部科学省所管の独立行政法人化された。
その組織が8月7日、CF開始にあたって、X(旧ツイッター)に、こんな投稿をした。
「かはく史上最大の挑戦開始
貴重なコレクションを未来へつなぐため、かはく史上最高額となる【目標金額1億円】のクラウドファンディングへ挑戦
地球から与えられた「宝物」を守り抜くー。そのためにどうか皆様の力を貸してください。」
熱い思いのこもった書きぶりや、マスコミでさかんに取り上げられたこともあり、あっという間に、「かはく史上最高額」は達成された。
収入35億円のうち、8割を政府が負担しているが…
開始4日目の8月10日夜、同館は特別ライブ配信を行った。
このライブ配信には、副館長や研究者たちが登場して、支援へのお礼を伝えるとともに、同館のコレクションについて語ることになっていた。
ところが、出演予定がなかった館長の篠田謙一氏が「どうしてもお礼が言いたかった」と飛び入りで参加。
「わずか数日で3万人以上から5億円以上の寄付をいただきました。館員一同、厚く御礼を申し上げるとともに、感激しています。目標をはるかに超え、当面安定運用できます。
積み上がっていく寄付を見ていると、皆さんの期待を感じます。科博の運営だけでなく、地球の宝を守れと」。淡々とした口調ながら、感極まっている様子がひしひしと伝わってきた。
国立科学博物館の今年度予算では、年間収入約35億円のうち、8割は政府が出資している。国から安定的に資金を得られているようにも見えるが、光熱費の高騰、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入場料収入の減少などによって財政が逼迫しているという。それが、今回の呼びかけにつながった。