研究機関、大学、個々の研究者でも増えている

CFは、インターネットを通じて広く一般の人々から資金を募る。ベンチャー企業や個人がアイデアを実現するための費用調達方法として、2000年代から米国でさかんになった。

日本国内でも、2011年に、CFのプラットフォーム企業「READYFOR(レディーフォー)」や「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」が誕生したことで、知られるようになった。

CFで支援を求めるテーマは、さまざまなジャンルにわたるが、国の予算が増えない中、研究機関、大学、個々の研究者なども利用するようになっている。

例えば、8月20日に受付を締め切った国立環境研究所の「タイムカプセル」事業もそのひとつだ。

環境省のレッドリストに掲載されている絶滅危惧種の培養細胞などを保存するための超低温凍結保存設備を、北海道に設置することを目指している。700万円を目標に支援を募ったところ、締め切り時には922万円が集まった。

ただ、CFはすべてが成功するわけではない。

CFには「寄付型」「購入型」などの種類があるが、国立科学博物館や多くの研究者や組織が利用しているのが「購入型」だ。その中に、「All-or-Nothing(オール・オア・ナッシング)」方式と、「All-in(オール・イン)」方式がある。

本来管理すべき国が、なぜ予算をつけないのか

提案されたプロジェクトに支援者が資金を提供し、その返礼として支援者は提案者からモノやサービスを受け取る。

「All-or-Nothing」方式は、締め切りまでに目標額に達しない場合は、CFは「不成立」となり、提案者は集まった資金を受け取ることはできない。お金は支援者に返却される。

「All-in」方式は、目標額達成の有無とは関係なく、資金を受け取ることができる。ただし、お金だけ集めて何も実行しないことがないように、条件を課される。

返礼品に惹かれて支援をする人も多いので、返礼品は提案者の腕の見せ所だ。国立科学博物館の場合は、支援額に応じて、

・YS11量産初号機のコックピットに乗る(支援額50万円)
・バックヤードツアー館長&副館長コース。館長と副館長がつくば市の同館研究施設を案内(同5万円)
・全5種トートバッグセット(同2万円)

など、体験型、レクチャー型、グッズ型など幅広く魅力的なものをそろえた。

収蔵品や研究成果を多数保有する、歴史と伝統ある博物館だからこそできたといえるだろう。

今回のCFは、一般の人々の関心や善意の大きさを示した点で素晴らしい。それを可能にした国立科学博物館の蓄積もそうだ。

ただ、一方で釈然としない思いが残る。

資料の管理、収蔵などは、国立科学博物館の本来の業務であり、国が予算をつけるべきものだ。なぜ、それができないのだろうか。本来つけるべき予算をつけないことは、日本の科学や文化にマイナスの影響を与える。