応援購入サービスMakuake(マクアケ)共同創業者で取締役の坊垣佳奈さんは、「売れるもの」の条件が変わってきているといいます。そして、かつての「大量生産して大々的なプロモーションをかける」売り方ではなく、「リスクを減らして小さく売り始める」方法を勧めています――。

※本稿は、坊垣佳奈『Makuake式「売れる」の新法則』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。

ブレインストーミングミーティング
写真=iStock.com/Sushiman
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「量産して大発表」の売り方が変化

インターネットによって作り手と受け手が直接的にコミュニケーションを取れるようになった時代において、これまであまりにも極端だった「売り方」が変わりつつあります。

大企業の例を出すとわかりやすいのですが、これまで世の中にものを出していくときには、量産し、大発表して、売り場の棚を他社から奪って売るというのが「商流の中身」でした。商品を世の中に出すのは一大事であり、作ったとしても広められない限りは売れませんから、プロモーションが重大なポイントでした。

つまり、資金的・人的な余力のある企業ほど、この「発表」と「プロモーション」と「棚獲得」という戦いにおいて優位ですから、大企業はより大企業としての戦い方ができ、そうでない企業はそれらに勝るアイデアでぶつかっていく、という状況です。

しかし、そういった従来の商流ではない「売り方」が生まれています。

Makuakeだけでなく、自社のECサイト、D2Cブランドのビジネスなど、インターネットを介して「もの、体験、情報」を消費者へ直接届けられる仕組みが増えてきました。限りのある棚を奪い合うことよりも、ユーザーのニーズや生活に寄り添うことを大切にできるようにもなりました。その環境を活かすために、企業規模の大小を問わず、「リスクを減らし、『スモール・スタート』」を勧めたいのです。

かつてのような「量産し、大発表して」の部分が変わり、「作ってみたから売ってみる」といったことに、ずっと取り組みやすくなってきたからです。

大企業も「改良前の試作品」で挑戦を始めよう

「大企業の看板を背負う」という言い方を耳にしたことのある方も多いかと思います。そのようなブランドを強く重視する企業の場合、「このブランド名がついていながら、こんな実験的な商品を出してきた」と思われてしまうようなトライは、しにくくなっているでしょう。

確かに消費者が安定・安心して使えるようなものを連綿とリリースしていくのも、ブランドの保持には必要なことかもしれません。ただ、そうなると一つの商品を出すにも相当な年月と労力がかかり、「失敗できない」というマインドを生みます。俄然、製造プロセスは重厚長大となっていき、時間と労力を費やした以上は成功したいと慎重にもなります。