インターネットは、生産者(作り手)と消費者(使い手)が直接つながることを可能にしました。応援購入サービス「Makuake(マクアケ)」共同創業者の坊垣佳奈さんは、これによって、サポーターを巻き込む売り方ができるようになったと指摘します――。

※本稿は、坊垣佳奈『Makuake式「売れる」の新法則』(日本経済新聞出版)の一部を再編集したものです。

薄暗いホールに満員の群衆
写真=iStock.com/Ksenia Lyubasova
※写真はイメージです

「誰が買ったか」がデータ化される

従来の販路のようなリアル店舗での接客・購買においては、不特定多数の顧客に対してアピールし、その多くが不特定多数のまま売買が完了してきました。

つまり、リアルでの販売しかできない場合、購買に紐づく顧客データが取得できず、仮に新商品や新製品ができたとしても再訪のアプローチのしようがありません。不特定多数に向けた戦略を打ち続け、たくさんの人に売ることを前提としたビジネスを志向せざるを得なくなります。

一方で、ECサイトなどオンライン販売の時代では、「誰が、いつ、どの商品を買ったか」という顧客情報がデータ化されます。そのデータをもとに、既存顧客をある一定のゾーンとして定義することで、ゾーンに合わせた再度のアプローチも可能です。たとえば、ID登録時に取得したメールアドレスへキャンペーンのご案内を送るというのも一つの手法です。リピーターを判別するために「初回購入特典」をつける、「次回購入以降の割引率を変える」といった購入歴に基づく施策も、プログラムによって自動的に割り振れます。

これはリアル販売とネット販売で、大きく差がつく要因の一つです。仮に商品が10個売れた場合、買ってくれたのが「10人の新規顧客が1個ずつ買った」のか、「1人が10個買った」のかで、今後のアプローチが全く異なることは想像しやすいはずです。そして、後者のような購買行動を起こしてくれる方は、まさにサポーターとみなすこともできるでしょう。

サポーターをあなたのプロジェクトに巻き込んでいくには、商品の発売前やプロジェクト開始前からの動きが重要です。それだけの関係を事前に築いておかなくてはなりません。

資金調達に苦戦した『この世界の片隅に』

Makuakeでサポーターの存在が大きく働いた例でいうと、まず印象的だったのはアニメーション映画『この世界の片隅に』製作委員会によるプロジェクトです。

今でこそ、第40回日本アカデミー賞の「最優秀アニメーション作品賞」に輝いた他、数多の映画賞を受賞して、テレビドラマ化もされるなど、確かな評価を得ている作品ですが、資金調達には苦労しました。

映画の原作は『夕凪の街 桜の国』『ぼおるぺん古事記』などで知られるマンガ家のこうの史代さんが、自らの代表作と認める同名のマンガ作品です。第13回文化庁メディア芸術祭で優秀賞も受賞しています。

マンガ『この世界の片隅に』を原作に、長編アニメーション映画化を試みた片渕須直監督も、『マイマイ新子と千年の魔法』といった作品で評価を得た、日本を代表するアニメ監督の一人です。ところが、企画段階で業界のプロたちから「ヒットの要素が見当たらない」と評価され、製作資金の調達は難航します。

『Makuake式「売れる」の新法則』(日本経済新聞出版)より
Makuake式「売れる」の新法則』(日本経済新聞出版)より