国宝は、国指定の重要文化財の中からより価値の高いものが選ばれたものだ。指定件数は建造物、美術工芸品など1100件あまり。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳さんは「日本最古の寺院・飛鳥寺が所有する飛鳥大仏は1400年以上前から一度も動かず鎮座していますが、国宝指定されていません。そこには歴史的経緯があります」という――。
飛鳥大仏
撮影=鵜飼秀徳
飛鳥大仏

なぜ日本最古の寺院にある飛鳥大仏は国宝に指定されないのか

このところ、近現代建築の文化財指定が増えてきている。

2020年には新たに犬吠埼灯台(1874年初点灯、千葉県銚子市)などの4つの灯台が重要文化財に指定された。現役の灯台の重要文化財指定は初のことである。

また、今夏に登録有形文化財(建造物)に指定される予定で注目は、神戸市摩耶山麓に建旧摩耶観光ホテル(1930年築)。曲線が強調された外観や、アール・デコ調の舞台などが特徴の建築物だ。1993年にすべての営業を終えても撤去されず、廃墟マニアの聖地として知られていた。近年はクラウドファンディングによる保全資金の呼びかけに注目が集まっていた。

国宝においても2009年、旧東宮御所(迎賓館赤坂離宮)が近代建築物として初めて国宝に指定されている。国宝は、重要文化財の中から特に価値の高いものから選ばれる。

「重要文化財止まり」になっている歴史的な経緯

とはいえ、国宝の“定番”はやはり寺社由来のものだろう。

例えば、奈良の法隆寺は美術工芸品20点、建造物18点の計38点もの国宝を保有している。

最古の国宝は、「土偶(縄文のビーナス)」(紀元前3000年〜前2000年前の品)である。

そして、最新の国宝(建造物)は昨年に指定された八坂神社本殿(京都市東山区)だ。

一見、「国宝に違いない」と思えるような文化財が、実は指定から外れているケースもある。その際たるものが「飛鳥大仏」だ。

飛鳥大仏を所有するのは、日本最古の寺院、飛鳥寺(奈良県明日香村)である。最古の寺院にある飛鳥大仏は当然、国宝に指定されてよさそうだが、「重要文化財止まり」なのだ。それには歴史的な経緯がある。飛鳥寺の歴史をひもといてみよう。