現在、日本国内の仏教宗派には曹洞宗、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、浄土宗など167ある。ジャーナリストで僧侶の鵜飼秀徳氏は「仏教が日本に入ってきたのは6世紀。歴史の中で各宗派の勢力は変化してきました。近年は『宗旨・宗派を問いません』というケースが増え、仏教の枠組みも変わりつつある」という――。
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なぜ「宗旨・宗派は問いません」が増えたのだろうか

近年、「宗旨・宗派は問いません」などとうたう、納骨堂や永代供養墓が増えてきた。しかし、この表現はアバウトだ。「宗旨」と「宗派」は本来同義だ。この場合、おそらく「宗旨=○○宗」と「宗派=○○派」とを分けていると思われる。

つまり分かりやすくいえば、「仏式の場合、お墓はそれぞれの決まった宗派のお寺に納めてもらうのが慣例ですが、うちの納骨堂はどの宗派の方でも納められます」ということになる。これまで納骨に際しては、「宗派しばり」が当たり前だったのだ。

だが、日本の仏教宗派の成り立ちや、どのような違いがあるのかについては、じつに複雑怪奇だ。

6世紀に日本に仏教が入ってきた当初は、「ひとつの仏教」だった。それが、鎌倉時代初期までに8宗(南都六宗に加えて天台宗、真言宗)に別れた。さらに、鎌倉時代に法然が浄土宗を、親鸞が浄土真宗を、日蓮が日蓮宗、栄西が臨済宗、道元が曹洞宗を開くなどし、いわゆる鎌倉新仏教が誕生する。

以後、その弟子筋らによって、さらに細かく分派していく。昭和初期までに「13宗56派」にまで膨らんでいる。それが1939(昭和14)年、宗教団体法が施行されて公認制となり、「13宗28派」にまとめられた。戦後は、さらに分派が進み、現在でも増減を繰り返している。

では、直近でどれだけの宗派が存在するのか。国から認められた包括法人(仏教宗派、令和2年)はなんと167(前年比マイナス1)もある。

このなかで最大の宗派は、およそ1万4600カ寺もの末寺を抱える曹洞宗である。次いで約1万300の末寺がある浄土真宗本願寺派。3位は真宗大谷派(約8600カ寺)、4位は浄土宗(約7000カ寺)、5位は日蓮宗(約5100カ寺)――となっている。

曹洞宗の規模がずば抜けて大きいのは、派閥に別れていないからである。派閥の全てを包括すれば、浄土真宗(主に10派)系が全体で約2万1000カ寺と曹洞宗を抜いて圧倒的勢力となる。