なぜ、京都には曹洞宗のお寺が少ないのか

日本を代表する仏都、京都。寺の数の上では3000カ寺余りで愛知県や大阪府のほうが多いが、なんといっても主要教団だけで大本山の寺院が36もあるのが特徴だ。

浄土宗総本山知恩院、東西本願寺、臨済宗妙心寺派妙心寺、同天龍寺派天龍寺、東寺真言宗総本山東寺などである。そのため、こうした大本山傘下の寺院が比較的まんべんなく分布している。

その京都にあって、あえていうならば、曹洞宗寺院が少ない。これは、京都五山(臨済宗)勢力に、曹洞宗勢力が洛外へと押し出されたとも考えられる。

広島や山口、島根は浄土真宗、山口は浄土真宗本願寺派

中国地方に目を転じれば、広島県や山口県、島根県では浄土真宗勢力が強い。山口県にはおよそ1400の寺院があるが浄土真宗本願寺派寺院が600カ寺を占める。これは戦国時代、毛利元就が真宗門徒の結束の強さに怯え、また、利用しようとして真宗寺院を庇護したからである。

四国の高知県や、九州の宮崎県、鹿児島県はそもそも寺院数が極端に少ない。高知県約360カ寺、宮崎県約340カ寺、鹿児島県約480カ寺である。

鹿児島県に残る廃仏毀釈の痕跡
鹿児島県に残る廃仏毀釈の痕跡

これは明治維新の時、日本仏教界が受けた最大の法難である「廃仏毀釈」の影響だ。廃仏毀釈とは新政府が出した神仏分離令に端を発した仏教への迫害のこと。鹿児島県では寺院が1つ残らず打ち壊され、宮崎県や高知県でも大方の寺院が消滅した。

廃仏毀釈の影響は凄まじく、約9万カ寺あった寺院がわずか数年の間に半減したとも言われている。今でも鹿児島県、宮崎県、高知県では寺院が少ないのは廃仏毀釈の影響である。

特に鹿児島県では江戸時代の寺院分布が完全にリセット。廃仏毀釈の嵐が止んだ後、この寺院空白地帯において浄土真宗が大布教を実施。現在、鹿児島県内では8割以上が浄土真宗系寺院となっている。