※本稿は、澤口俊之『脳科学で知る! 世界一わかりやすい「怒り」の教科書』(ハーパーコリンズ・ジャパン)の一部を再編集したものです。
「怒りっぽい人」が失うものは大きい
「怒り感情」は生きていくうえでなくてはならないものです。でもその一方で、さまざまなリスクや弊害をもたらします。
考えてもみてください。怒りっぽい人のそばには誰も近づきたくないものです。また、怒りを爆発させたことで人間関係を損なったという経験がある人もいるのではないでしょうか。
それ以上に、身体に多大な悪影響を与えます。
怒り、特に持続する(慢性的な)怒りによってもたらされるのは、ストレスホルモンの絶え間ない洪水と、怒りの感情に伴う体内の代謝変化です。それによって引き起こされるのは、高血圧、頭痛、消化器系の問題、湿疹などの皮膚のトラブルなど。
加えて、肺機能。誰でも加齢に伴って肺機能が悪化して肺活量も減りますが、怒りや敵意のレベルが高い人ほど肺機能はより早く悪化しますし、肺活量の低下も早いことが以前からわかっています。
「額のしわ」は死亡リスクを高める
こうした肺の老化加速には、免疫系の悪化による慢性的な炎症が関与しているようです。なので、怒りをうまく抑えることができない人は、肺に炎症性のダメージが起き、息ができなくなる可能性も高いです。喘息やうつ病、心臓病などの疾患がある場合はより深刻で、心臓発作や脳卒中につながるケースすらあります。
さらに、イギリスの医学系学術誌『ソラックス』に発表された調査結果では、常に怒りを感じている人はより早く老化する可能性が高いことを示しました。怒っている人は眉をひそめる傾向が強いんだそうですよ。そのため、怒りによる眉間のしわなどが原因で、顔が老けて見える傾向があります。
ちなみに、額の深いしわは侮れなくて(誰も侮っていないでしょうけど)、心血管疾患による死亡リスクを高めることを欧州心臓病学会が示唆しています。
学会主導の研究は長期間に及ぶものがそれなりにあるんですが、この調査研究では社会人3200人を20年間にわたって調査し、額に深いしわが多数ある人は、しわがない人に比べて心血管疾患で死亡するリスクが10倍近く高いことを見つけました。この関連性は、年齢、血圧、コレステロール値などの既知のリスク要因を統計的に考慮しても変わりませんでした。

