わからない自分を努めて隠さないようにする
取材中、相手の話が難しくてわからないということもよくあります。まだ未熟なころは「こんなこと知らないと馬鹿にされるかもしれない」と、わかったような顔をしてそのままやり過ごすなんてこともなきにしもあらずでしたが、それでいい結果が出たことはまずありません。
いまはむしろ、わからないことをそのままにして話を進めるのは聞き手の恥だと思って、わからない自分を努めて隠さないようにしています。その際、私がよくやるのは、「その化学式は、要するに旦那さんの浮気に気づいた奥さんが、怒って家を出ていってしまったみたいなことですか」というような、たとえ話で確認するというやり方。これだと、こちらがどこまで正しく理解しているかがはっきりするので、相手も説明しやすくなるというわけです。
このように、こちらの聞きたいことと相手の話したいことが異なるときは、まず相手に話をしてもらい、そこから少しずつこちらの聞きたいことに舵を切っていくようにするという小技が役に立ちます。ただ、これは、いつも成功するとはかぎりませんけどね。私もまだまだ修業中なのです。
1953年、東京都生まれ。東洋英和女学院高等部卒。慶應義塾大学文学部西洋史学科卒業。『筑紫哲也NEWS23』『報道特集』などの報道番組から『ビートたけしのTVタックル』などのバラエティ番組の進行まで幅広い顔を持つ。2012年発売の『聞く力―心をひらく35のヒント』(文春文庫)は160万部以上の大ヒットに。