必要とされる能力、やらなくてはいけないとわかっていても、日々の仕事に追われて学べない。そんな人に、識者の勉強法を公開。

「感情や思い」など主観はむしろ邪魔

論理思考の重要性は今さらいうまでもありませんが、ざっとおさらいをしておきましょう。

現代のビジネスシーンにおいて、論理思考はいわば「共通言語」と言えます。企業のグローバル化が進むなか、英会話力は外国人とのコミュニケーションに必須ですが、それと同様に論理思考も一種の言語と言えるのです。

後述する、文法・慣用句のような基本の「型」の習得は早ければ早いほどいいでしょう。

とりわけ、この思考が求められているのは、大企業や海外とのやりとりの多い企業です。外国人が一定数在籍している、社員の男女比のバランスに偏りが少ない、様々な部門の意思決定者がディスカッションすることが多い、そんな社員構成の企業ほど、論理思考という共通の言語が仕事の前提になっています。

では、そもそも論理思考とは何でしょうか。キーワードは2つ。「誰が見て(聞いて)」(1)も「話がつながって」(2)いる。そう感じられるのが論理思考のポイントです。

まず(1)に関してご説明しましょう。どんな人が見て(聞いて)も、理解しやすい話をするのは案外難しいことです。

例えば、互いの人柄や仕事ぶりをよく知る同僚であれば、「例の件は……」といった大雑把な表現や省略した言葉でも意思疎通が可能です。ところが、部外者や素人、顧客、他社の人、外国人、異なる世代の人など「背景」を知らない相手の場合、それではうまく伝わりません。

また、詳しく説明しても話が「主観」に偏っている場合も、「誰が見て(聞いて)」もわかる、という原則に当てはまりません。論理思考を実践するうえでは、感情や思いといった主観はむしろ邪魔になってしまいます。

「あなたの話はわかりにくい」

そんなふうに指摘されることがあるのなら、自分の話は論理的でないと自覚し、意識的に主観を排して客観性のある話になるよう努力してください。自覚がなければ、成長はありません。

「今夜は酔っちゃったな」という酔っ払いと、「俺は全~然酔ってないよ」という酔っ払いを比較したとき、タチが悪いのは後者です。「まだ、飲める」とか「車の運転もできる」とか言い出すのですから。そうした醜態を避けるためにも、「もしかして、自分がいけないのかもしれない」という視点で、自分の説明力を自己評価し、周囲の人にも批評してもらうといいでしょう。