朝と夜で脳は変わる
高血圧症の治療で1日の血圧の変動に合わせて降圧薬を服用する時間を決めるなど、生体リズムを取り入れた時間医学という研究分野がある。昼と夜では異なる生体のリズム。「物理的には同じ1分でも、朝の1分と夜の1分では違うのです」と本郷赤門前クリニック院長 吉田たかよし氏。
論理的思考や自我をつかさどる前頭前野が優れている時間帯は朝なので「論理的な能力が要求される仕事については、朝にやったほうがいいことは確か」(吉田院長)。
「統計的に見ると計算問題をやらせると若い人は夕方のほうが成績はよく、年寄りは午前中のほうが成績がいい傾向があるので、年寄りの多い会社の役員会は朝がいいかもしれない(笑)」(諏訪東京理科大学教授 篠原菊紀氏)
午前中の会議は問題の解決、情報の共有向きで、午後の会議は問題の発見やクリエーティブな話題に向いている。
朝と夜の違いで面白いのが、同じ人でも朝のほうが誠実で、夜は不誠実になるのだとか。
「ハーバード大の実験ですが、算数の問題を解いた後に自己採点させ、点数に応じて賞金を出すという実験をしたのです。自己採点なので、ご褒美をもらおうと思ったらウソつき放題です。すると、明るい部屋では答案をごまかした人が24%。ところが薄暗い部屋で同じテストをすると61%がズルをしたのです。どうやら明るいときと暗いときでは人はモードが変わる。明るいと相手の行動がよく見えるので、信頼・協力関係を築こうとする。逆に暗いとウソがバレにくいので、ウソをついたほうが得だと感じ、不誠実な本能が目覚めてしまう。同じ人が朝は正直で夜はウソをつきやすくなることも実証されています」(吉田院長)